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ジツ充とジコチュウの違い

 

ジツ充とジコチュウの違い 生きづらい人生の歩き方 第26回

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生きづらい人生の歩き方

 

第26回
ジツ充とジコチュウの違い

 
実存を満たす生き方「ジツ充」を目指す方から、よくお受けする質問があります。
 
それはジツ充を目指すことで、いわゆる、
 
「ジコチュウ」
 
な人間になってしまうのではないかというご心配についてです。
 
たしかに、私という「個」を極めるなどと言われたら、他の人のことなど一切気にしないでワガママな人間になってしまいそうですよね。
 
自分の満足だけを考えるジコチュウになってしまうのではないかと不安になるのもごもっともだと思います。
 
でもご安心ください。
 
ジツ充を目指しても、ただのジコチュウにはなることはありません。
 
なろうと思ってもなれないのです。
 
思い出してください。
 
実存とは「私という存在そのもの」だということを。
 
つまり、むきだしの存在。
 
名前もない、住所も、学歴も、職業も、国籍も、性別も、体もない。
 
むきだしの私。
 
その存在の意義を問うということは、そもそも自分とは何かということを問わざるをえなくなることを意味しています。
 
ここではあまり深い入りしませんが、自分とはいったい何なのかとどこまでも問うていけば、やがて世界と自分との境目なんてあってないようなものなのだということに気がつくでしょう。
 
それを私は著書「生きづらさから脱け出す実践法」の中で、
 
「世界=自分」
 
と表現しました。
 
つまり、一本の井戸を深くふかく掘りつづていくと、やがて地下水脈という水源そのものにたどりつくということ。
 
さらに、その水源をとおして、すべての井戸が実はつながっていると気づくのです。
 
井戸の水と地下水脈の水は同じもの。
 
自分の井戸の水とすべての井戸の水も同じもの。
 
つまり「世界=自分」であると気づかされるのです。
 
これは、人類みな兄弟、世界は一つといった標語的な倫理観とは、まったく別のもの。
 
そして、すべてのものは一つであるといったロマンティックな世界観ともまったく別のものです。
 
「私の欲求」というごく狭い範囲のものだけを満たそうとすることに、とてつもない違和感をおぼえるようになるということです。
 
私を優先するべきか、世界を優先するべきか葛藤せざるをえなくなるのです。
 
これは「実存的葛藤」です。
 
自我を満たすという方向と、自我を失くし世界のために生きるという方向が相反しているという事実に向き合い、葛藤に突入せざるをえないのです。
 
自分だけおいしいものを食べて、満腹になっていていいのだろうかと迷う。
 
人助けをしていても、結局は自己満足なのではないかと悩む。
 
それは、
 
「私だけいい思いをしている」
「困っている人を見殺しにしている」
 
という単なる罪悪感でもない。
 
「一人で生きているのではない。だから助け合わないと」
 
というお道徳でもない。
 
「人助けなんてただの偽善だよな」
 
という安っぽいニヒリズムでもない。
 
そんな簡単に答えを出してはいけないような感覚。
 
頭の中で問うても問うても答えが見つからないような感覚が生じてくるのです。
 
自分だけ満足することが、なぜいけないのか?
 
「世界=自分」なのにもかかわらず、なぜ他人を蹴落としてまで生きようとするのか?
 
なぜ私たちは、こんなにも自分の欲求ばかりを満たそうとするようにできているのか?
 
なぜ、世界に貢献してさえいれば満足できるように作られていないのか?
 
どうして世界はこんなに不公平なのか?
 
そもそもなぜ生きるのか…?
 
そのような問いに答えが見出せずに、葛藤せざるをえなくなるのです。
 
そして自分の人生をとおして、本気でその答え導き出そうとする。
 
その答えを行動でたしかめるようになるのです。
 
やがて、どんなに偉そうに問うても、自分にできることなんてとても限られているという事実をイヤというほど突きつけられる。
 
ジツ充を本気で極めようとすれば、ジコチュウになりようがなく、おごりたかぶりようもないのです。
 
もちろん日常生活レベルでは、ワガママに振るまったり、ついつい調子に乗ってしまうことはしょっちゅうあるでしょう。
 
でも、心の底から実存的葛藤が消えてしまうことはない。
 
問いを目の前にして、
 
「人生なんてそんなものだ」
 
という思考停止では割り切れない。
 
人助けをしたからといって、
 
「私は善人だ」
 
と安心してしまうこともない。
 
法を犯した人を見ても、
 
「なんて悪いヤツだ」
 
なんて簡単には断罪できない。
 
その妥協を限りなくはぶいた実存的葛藤の中から導き出した答えでなければ、実存は満たされないのです。
 
もしリア充を目指していたら、「私の欲求」だけを満足させればいいのですから、実存的葛藤にはおちいりようがありません。
 
葛藤するとしたら「私の欲しいもの」と「私の収入」が相反しているとか、「私の子育て方針」と「私の子供の性格」が相反しているとか、「私のやりたいこと」と「私の能力」が相反しているといった、ごくごく個人的な範囲でしょう。
 
もちろん、人間は誰もがそのような個人的な葛藤を持っています。
 
しかし、ジツ充はそのような個人的な葛藤とは別に、実存的葛藤を持っている。
 
世界と自分との葛藤におちいる。
 
自我を満たさざるをえない現実と、世界の中で使命を果たそうとする衝動がぶつかる。
 
どのように生きていけばいいのかわからなくなるのです。
 
その本気の葛藤の中から導きだされていくのが、私という「個」の役割。
 
その役割が、単なるジコチュウになることはあり得ないでしょう。
 
これは決して楽しいだけではない、濃密な生き方です。
 
ジツ充とは、常に深い葛藤とともに歩む生き方。
 
サラリとした口当たりがいいだけの生き方ではなく、中身のギュッと詰まった、
 
「のど越しのある生き方」
 
なのです。
 
Brain with Soul代表
生きづらさ専門カウンセラー
信夫克紀(しのぶ かつのり)
 

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生きづらい人生の歩き方 <目次>

1.生きづらい人がAI時代に生き残れる仕事とは?
2.「世界一即戦力な男」に見る引きこもり脱出の糸口
3.生きづらい人向け「ビジネスの成功法則」
4.あなたは「善人」ですか「悪人」ですか?
5.お金は好きですか?-生きづらい人が陥るお金のジレンマ
6.「お金もうけ」にとらわれなくなる話
7.生きづらい人は「リア充」より「ジツ充」を目指そう
8.我慢してるのに自分勝手と言われる
9.生きづらさの正体
10.死んでも世界はつづくのか?
11.実存を充実させる生き方
12.他人の目が気になる人へ
13.「ジツ充」の極め方
14.不安の上手な対処法
15.変えられること、変えられないこと
16.「変えられること」の見つけ方
17.感情に飲み込まれない方法
18.自分と同じ症状の人が見当たらない
19.人生を変える方法
20.人生が変わる瞬間に必ず起こる問題
21.「心の空間」を生きる
22.話が噛み合わないと感じるなら
23.人生に疲れ果てたとき
24.「自分らしさ」とは何か?
25.AIと張り合うくらいなら
26.ジツ充とジコチュウの違い
27.社会に絶望している人へ
28.ネガティブ思考を変える適切な方法
29.生きづらい人は仕事を「三つ」もとう
30.心の健康法の効果が出ない理由
31.ベーシックインカムで将来も安心?
32.「悩み解決書」で悩みが解決しない理由
33.生きづらさを癒す一つの方法
34.もっとクヨクヨ考えよう
35.仕事を三つもつ理由
36.好きなことを仕事にする…?
37.苦しみの活かし方
38.向かい風を追い風にする生き方
39.行動力を身につける方法
40.お金との上手なつき合い方
41.自己洗脳と自己欺瞞
42.人並みという幻想
43.元気がないと幸せになれないのか?
44.「社会の常識」に振りまわされない
45.気が休まらない…
46.綺麗事に気づいてしまう人
47.生きづらい人が起業を成功させられる理由
48.そんなかんたんな話じゃない
49.人に気をつかい過ぎて疲れしまう
50.悩み過ぎて体がガチガチ
51.正解なんてない
52.心に余裕がない
53.誰に相談したらいいのかわからない
54.やる気はどこから湧いてくる?
55.人と対立してしまう
56.許すか、許さないか
57.生き方を決める
58.好きなこと探しの迷宮
59.生きづらさは誰のせい?
60.集中しすぎてしまう
61.家にも世の中にも居場所がないときの解決法
62.不用意に交友関係を増やそうとしない
63.自分を最強の味方にする方法
64.世間のしがらみから脱け出したい
65.あと一歩が踏み出せない
66.なぜメンタルが弱いのだろう…?
67.生きづらい人が「苦手」を克服する方法
68.心配ごとが頭から離れない
69.認められたいのに認めてもらえない
70.引きこもりは「悪いこと」なのか?
71.楽に生きたい
72.失言が多いので減らしたい
73.誰も心配してくれない
74.お金の上手な使い方
75.やる気が出ないのはなぜなのか?
76.深く悩んでいる人の方が「えらい」のか?
77.生きづらい人が幸せになりたいなら
78.この人と結婚していいのか?
79.心が敏感な人向けの対処法から抜け落ちている視点
80.人生を変えられる人と、変えられない人の違い
81.親が嫌いな自分はおかしいのか?
82.著名人と自分を比べてしまう
83.自分を信じられない
84.上司や部下に言うことを聞いてもらえない
85.劣等感は克服も解消もしなくていい
86.ポジティブシンキングがうまくできない
87.結果だけで判断される社会
88.「自分がされたら嫌ことは他人にしてはいけない」の嘘
89.「性格が悪い」と言われてしまう
90.「ありのままの自分」というやっかいな問題
91.「お金」以外に8つの基準をもとう
92.どうしてこんなにつらいのに誰にも伝わらないのだろう?
93.仕事が恐い、職場が恐い - その恐怖の正体と解決策
94.「恩知らずな人」を許せない
95.他人を不愉快にさせてしまう
96.「等身大の自分」という言葉にひそむ罠
97.有効な「貯金」の仕方を身に着けよう
98.「なぜ怒っているのかわからない」と言われてしまう
99.頑張っているのに結果が出ない・・・
100.自分を「弱い」と感じている人へ
101.集団になじめないなら「思いどおり」にやろう
102.無駄に苦しんできただけだった
103.お金の不安をなくす方法
104.私の「すべて」をわかってもらいたい - わかってもらいたい症候群
105.なぜ苦しみを「克服」できないのか?
106.生きづらいなら「心地よい人生」を目指そう
107.生きづらい人は「扁桃体をいたわる生き方」を身に着けよう!
108.生きづらい人が自由になれる「メタ思考」とは?
109.世間との「ほどよい距離」の取り方とは?
110.たんたんと生きる
111.生きづらい人が目標を達成できない本当の理由
112.三理一体の法則がうまくいかない人の共通点とは?
113.カタルシスが生きづらさ脱出の「起爆剤」になる理由
114.「生きづらさ克服」の気力を失いそうなあなたへ
115.「仕事に行きたくない、家にいたい」当事者の声と具体的な対処法
116. 気が弱い人が人生を変える極意
117.消えない恨みへの「レベル別」対処法
118.生きづらさをこじらせる「完全な被害者バイアス」とは?
119.生きづらいなら「役割」を果たし人生を落ち着かせよう
120.生きづらい人にもっとも大切な支援
121.生きづらい人は「意志が弱い」のか?
122.自分軸よりも大切なもの -「実存軸」で生きよう
123.人の言葉に傷つきやすい人が知ると楽になる二つの事実
124.メタ思考力を鍛えたいなら「バカ」や「アホ」ともつき合おう
125.生きづらさの「原因」を安易に特定するネット記事が多すぎる
126.「誰でもHSP症候群」にかかった日本
127.「結論だけ欲しがる社会」に踊れされるな
128.生きづらい人は「ギバー」を目指さなくていい
129.「一人で生きていく」と決めた生きづらい人に必要な覚悟
130.マイノリティは、なぜ生きづらいのか?
131.生きづらい人の「意識」の上手な活かし方
132.もんもん耐性、それは自分の「本質」と向き合える力
133.生きづらい人はAIと仲良くなれる - 関係性のシンギュラリティ
134.「メンタルが強い人」のアドバイスを真に受けない
135.雑談力は必要か?雑談できないあなたへ
136.嫉妬しやすい人が「嫉妬しない人」になりたいなら
137.お金に振り回されなくなる「二つの力」
138.日本社会で生きづらい人が苦しんでいる本当の理由
139.自分は本当に「生きづらい」のだろうか?
140.生きづらい人はコミュニケーションが得意という事実
141.内にこもりたいとき、あなたはどうしていますか?
142.「憧れの人」を目指すな - ビジネスの成功者に憧れる生きづらい人へ
143.私には不満がない
144.「無駄にプライドが高い人」が好きだ
145.その他大勢になるな、唯一無二のままであれ。
146.「生きる意味」が見つからない、生きづらい人へ
147.「異物」として生きて
 


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