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心に余裕がない

 

生きづらい人生の歩き方第52回 心に余裕がない

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生きづらい人生の歩き方

 

第52回
心に余裕がない

 
カウンセリングでよく受けるご相談に、「心に余裕がない」というものがあります。
 
人からささいな指摘を受けたり、少し予定が狂っただけでもでカチンときてしまう。
 
子供のヤンチャやオテンバが気にさわり、ついついイライラした態度で接してしまう。
 
いつもなにかに追われている感じがして、あらゆることを受け止める余裕がなくなっているというお悩みです。
 
たしかに、心に余裕がなければ生きづらさはその度合いを増してしまいますよね。
 
では、いったいなにが心に余裕をなくさせているのでしょうか?
 
一つは「思考」かもしれません。
 
生きづらい人は思考停止が苦手です。
 
いつもいろいろなことを考えてしまう。
 
頭の中が思考でいっぱいで、他のことを考える余裕が少ないのです。
 
また、次から次へと湧いてくる「ネガティブな感情」が心の余裕をなくさせているということもあるでしょう。
 
扁桃体が敏感だったり、過去の嫌な記憶が次々と出てきたら、その対処をすることで精一杯。
 
心の余裕もなくなってしまうでしょう。
 
しかし、もっと根本的に私たちに心の余裕をなくさせているものがあります。
 
それは、
 
「効率」
 
です。
 
つまり、日常生活を効率よくこなそうとするがあまり、心に余裕がなくなってしまうのです。
 
そのために、「思考」や「ネガティブな感情」に上手に対処する余裕がますます奪われていく。
 
「心に余裕がない」という問題を改善していくには、まずはじめに、この「効率的にやらなくては」という心のクセに対処することがもっとも重要だと言えるでしょう。
 
私たちは、知らず知らずのうちに効率を最優先にして生きることが身についてしまいました。
 
なぜなら、日本全体が経済を中心とした「効率至上主義」に覆われているからです。
 
私たちが、9時~5時の勤務時間で一ヵ所に集まって働くのが「常識」と思い込まされているのも、経済的な効率のためです。
 
社会的共通資本を提唱したことで有名な、経済学者の宇沢弘文氏は経済と人間の旅(日本経済新聞社:刊)」のなかで、
 
「近代経済学の現在の混迷は、効率性のみを中心とした形式論理的演算に終始して、経済学のもう一つの重要な側面である公正、正義、平等についての関心を全く無視してしまったことに起因している」
 
と述べています。
 
つまり、経済学がうまくいかないのは効率のみを重視しているから。
 
加えて、
 
「政府はさらに社会共通資本の管理と並んで、もう一つ重要な役割を果たす必要がある。それは、所得分配の不平等性を是正するための社会保障制度の運営である。」
 
とも提言しています。
 
これは、政府の重要な役割とは、経済活動によって生じた私たちの所得が、極端に不平等に分配されないような仕組みをつくることだ、ということでしょう。
 
これが書かれたのは、1971年。
 
すでに50年近くも前のお話しです。
 
にもかかわらず現在の我が国は、なんの反省もせず、適切な所得分配などは二の次で、効率的な経済発展を最優先の目標として掲げています。
 
「働き方改革」も、一見すると労働者を守ることを目的としているようですが、じつは効率化の象徴。
 
なぜなら、経済を発展させながら働く時間を短くするには、効率をあげるしかないからです。
 
「経済成長しよう」と呼びかけておき、一方で「働く時間を短くしろ」と迫るということは、言いかえれば、
 
「徹底的に効率をあげよ」
 
と言っているのと同じことです。
 
私たちは、今まで以上に効率を最優先にせざるをえなくなるのです。
 
もちろん、効率化自体が悪いわけではないですよね。
 
本来、効率的にものごとをこなすことは、時間や労力の余裕を生み出し、心の余裕も生みだしてくれるものです。
 
ただ、やみくもに効率を求め、効率的であるかどうかが価値の基準になってしまうのであれば、それは効率至上主義に他なりません。
 
今の日本は、その効率至上主義をつづけるどころか、それに拍車をかけてしまっている状態。
 
「超効率至上主義国家」だと言えるかもしれません。
 
そのなかで生きている私たちの価値基準には、「効率」という二文字がベッタリと張りついてしまっている。
 
「効率=価値そのもの」になってしまっているのも、仕方のないことなのです。
 
その結果として、なんでもかんでも効率を優先するようになってしまった。
 
仕事や家事はもちろんのこと、入浴も歯磨きも効率化。
 
勉強も語学の習得も効率化。
 
フラっと出かけた散歩も効率化。
 
子育てだって効率化となってしまったのです。
 
そんな余裕のない暮らしに嫌気がさして、せっかくのんびりするためにでかけた海外のビーチでさえ、デッキチェアに横になっていたとしても、おちおち寝ていられない。
 
だんだん焦ってきて、あの名所を見に行かなきゃ、免税店に買い物に行かなきゃ、あれを食べに行かなきゃとガバっと起き上がって、すべてこなせる効率のいいルートをスマホで検索。
 
そして、どこまでもつづく青い海と広い空を置き去りにして、ビーチを離れてしまう…、なんてことにもなってしまうわけです。
 
なんでも効率的にこなそうとすると、効率的ではないことすべてが許せなくなります。
 
効率というレールからはずれた行動はすべて「ミス」や「損」になってしまう。
 
そうなると、レールからはずれないように、いつでも気を張って暮らさなくてはならなくなる。
 
これでは、心に余裕がなくなってしまうのも当然のことですよね。
 
だから、心に余裕がないと感じたときは、日常のなかで、
 
「あえて非効率を楽しむ」
 
ようにしてみましょう。
 
たとえば…、
 
窓辺でひたすら空を見上げる、
 
CDやレコードで音楽を聴く、
 
オンデマンドビデオを観る、
 
大好きな本を読む、
 
子供や動物をながめる…、
 
などなど…。
 
「効率をあげたくてもあげようがない時間」を、一日のなかにたった10分でもいいからつくるのです。
 
非効率にするコツは、わざわざどこかに行かなくともできることを選ぶようにすること。
 
わざわざでかけると、その手間をかけた分だけ効率的に価値を取り戻したくなってしまうからです。
 
また、音楽や映画であれば、倍速再生したりチャプターを選んだりすることができない機器や環境を選ぶこと。
 
「大好きな本」としてあるのも、速読で読み飛ばしたりせず、一字一句をじっくり読みたくなるようにするためです。
 
子供や動物とも「遊ぶ」のではなく「ながめる」。
 
遊んでしまうと、子供や動物特有の非効率な行動が目について、ついつい効率的になおしてあげたくなってしまいます。
 
だから、ただほのぼのと「ながめる」。
 
そんな工夫をしながら、非効率な時間を毎日少しでいいからもつようにしてみましょう。
 
重要なのは、自分が「超効率至上主義国家」に住んでいることに気づき、そこから上手に距離をとることです。
 
それが心の余裕をつくるための第一歩。
 
もちろん、いそがしくてそんなことを言っていられない日があるのも現実ですよね。
 
でも、ほんの少しずつでも実現できるような環境に整えていくことが大切です。
 
生きづらさから脱け出すためには、生理、心理、物理の三理一体でのぞんでいく。
 
心に余裕を持つために、効率でがんじがらめの生活にはサヨナラしましょう。
 
Brain with Soul代表
生きづらさ専門カウンセラー
しのぶかつのり(信夫克紀)
 


生きづらい人生の歩き方 <目次>

1.AI時代に生き残る仕事
2.「世界一即戦力な男」に見る引きこもり脱出の糸口
3.これからのビジネスの成功法則
4.善人なんていない
5.お金は好きですか?
6.「お金もうけ」にとらわれなくなる話
7.「リア充」を目指すより
8.我慢してるのに自分勝手と言われる
9.生きづらさの正体
10.死んでも世界はつづくのか?
11.実存を充実させる生き方
12.他人の目が気になる人へ
13.「ジツ充」の極め方
14.不安の上手な対処法
15.変えられること、変えられないこと
16.「変えられること」の見つけ方
17.感情に飲み込まれない方法
18.人に拒絶されると傷ついてしまう
19.人生を変える方法
20.人生が変わる瞬間に必ず起こる問題
21.「心の空間」を生きる
22.話が噛み合わないと感じるなら
23.人生に疲れ果てたとき
24.「自分らしさ」とは何か?
25.AIと張り合うくらいなら
26.ジツ充とジコチュウの違い
27.社会に絶望している人へ
28.ネガティブ思考を変える適切な方法
29.仕事は三つもつ
30.心の健康法の効果が出ない理由
31.ベーシックインカムで将来も安心?
32.「悩み解決書」で悩みが解決しない理由
33.生きづらさを癒す一つの方法
34.もっとクヨクヨ考えよう
35.仕事を三つもつ理由
36.好きなことを仕事にする…?
37.苦しみの使い方
38.向かい風を追い風にする生き方
39.行動力を身につける方法
40.お金との上手なつき合い方
41.自己洗脳と自己欺瞞
42.人並みという幻想
43.元気がないと幸せになれないのか?
44.社会の常識に振り回されない
45.気が休まらない…
46.綺麗事に気づいてしまう人
47.生きづらい人が起業を成功させられる理由
48.そんなかんたんな話じゃない
49.人に気をつかい過ぎて疲れしまう
50.悩み過ぎて体がガチガチ
51.正解なんてない
52.心に余裕がない
53.誰に相談したらいいのかわからない
54.やる気はどこから湧いてくる?
55.人と対立してしまう
56.許すか、許さないか
57.生き方を決める
58.好きなこと探しの迷宮
59.生きづらさは誰のせい?
60.集中しすぎてしまう
 

 
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