TOP | コラム一覧 | 生きづらい人生の歩き方 | 「等身大の自分」という言葉にひそむ罠


更新日:2020年3月18日

「等身大の自分」という言葉にひそむ罠

 

「等身大の自分」という言葉にひそむ罠

LinkIcon目次はコチラ   
 

生きづらい人生の歩き方

 

第96回
「等身大の自分」という言葉にひそむ罠

 

┃「等身大」でいられない私たち

 
「等身大の自分で生きよう」と語りかける人がいますよね。
 
私も大賛成です。
 
無理に背伸びをせずに、自分にできることを知り、それを懸命にやる。
 
周囲の人を気にせず、ただ自分の得られたものに満足していく。
 
「等身大の自分」で生きていくことができたら、本当に心穏やかに「スキッ!」と生きていくことができますよね。
 
しかし・・・。
 
いざ「等身大の自分」で生きてみようと思うと、これがなかなか難しい。
 
やっぱり他人の年収は気になりますし、子供の成績も気になる。
 
出世を完全にはあきらめることはできず、同僚の仕事ぶりだけ上司から褒められれば納得がいかない。
 
自分より学歴がはるかに高い人と会うとなんか萎縮してしまい、子供に中学受験させようと当の子供本人よりも頭を悩ませる。
 
部下の奥さんが美人でスタイルがよければ悔しくなり、ママ友のみんながこぞって家を買うと心穏やかではいられない。
 
無理に無理を重ねて苦しんできたから、もう「等身大の自分」で生きようと誓ったのに、やっぱり自分の「等身」を認めきることができない。
 
自分はもっと高い「等身」なのではないかという思いが、ムクムクと湧き上がってくる。
 
そして気がつけば・・・。
 
またしても、「等身大」以上の活躍をしようとし、等身大以上のものを得ようとして、無理に無理を重ねる日々を送ってしまうことになるのです。
 
 

┃等身大で生きられないのは「二つの矛盾」があるから

 
どうして私たちは「等身大の自分」で生きることが難しいのでしょうか?
 
じつはそこに「二つの矛盾(むじゅん)」が潜んでいるからです。
 
一つ目の矛盾は、「等身大で生きるな」という強いメッセージのなかで育ったこと。
 
つまり、そもそも私たちは「等身大の自分」で生きることを許される環境で育っていないということです。
 
勉強の成績がよければ褒められ、あらゆることを多めに見てもらうことができ、ときには褒美までもらえる。
 
反対に、成績が悪ければ怒られ、けなされ、バカにされる。
 
その差をわかりやすくするために、点数をつけられて、順位まで発表され、廊下に張り出されていました。
 
そして順位が低いものは高いものを「見習え」と言われ、「そんな順位で悔しくないのか?」とけしかけられてきた。
 
わかりやすく言うと「できるだけ背伸びせよ!」とさんざん言われてきたのです。
 
さらに、たんに「生まれた年月日がだいたい同じ」という枠でだけくくられて、「この年齢なら、あなたにはこれくらいできて当然」と勝手に決めつけられてきた。
 
自分の「等身」を勝手に決められてきた。
 
つまり、「等身大の自分」で生きる価値観も行動力も、身につける機会をいっさい奪われてきたのです。
 
その生き方が、心の奥深くまで根づいています。
 
それが今になって「等身大の自分でいいんだよ」とか言われても、そうかんたんに価値観がくつがえる訳がありません。
 
どう行動したらいいのかも、まったくわからない。
 
いったいなにに価値を見出していけばいいのかもわからない。
 
そして「等身大で生きようとしているのに、なぜできないんだ・・・」という新たな苦悩を抱えることになってしまうのです。
 
このような状況のなかで、「等身大の自分」で生きるというのは、強い意志や覚悟が必要です。
 
「等身大で生きよう」という言葉は、一見やさしそうに見えて、意外とハードルが高い生き方なのです。
 
 

┃「等身大の自分」になりにくい幼稚な社会

 
「等身大で生きる」ことを難しくさせている「二つの矛盾」。
 
その二つ目の矛盾は、「等身大の自分でいさせてくれない幼稚な社会」です。
 
今は、SNSの発達によって個人が情報を発信するのが当たり前になっています。
 
周囲の人を気にするなと言われても、これだけ個人の活動内容がせきららに公表されていたら、嫌でも目に入ってきてしまいます。
 
私たちは、インスタ映えする(つまりじっさいの現実よりも盛ってある現実)を見せびらかす情報の中で生きていると言えるでしょう。
 
これほどまでに多くの「他人の自慢話」に毎日つき合わなければならない文化は、過去の人類の歴史のなかでなかったはずです。
 
この幼稚な文化のなかで「等身大の自分でいいんだよね」と言えるようになるのは、至難のワザでしょう。
 
たいていは「ヤセ我慢」になってしまう。
 
さらに問題なのが「等身大の自分で生きよう」と述べている人のほとんどが、社会的に成功している人、つまり「等身大の自分」が大きい人なのです。
 
そのような人が書いた本の内容を要約すれば、
 
「私の等身大は大きいのでいろいろなものを得ていますが、あなたは小さいからあきらめて我慢しましょうね」
 
と言っているにすぎません。
 
そうして読者から得た印税で贅沢をし、そのリア充ぶりをSNSで公開して「ヤセ我慢」をあおっている。
 
矛盾以外のなにものでもありません。
 
「等身大の自分」で生きるには、かなり厳しい環境のなかで私たちは暮らしているのです。
 
 

┃「等身大の自分」よりも大切な「軸」

 
「等身大の自分」を認めることは、たしかに大切でしょう。
 
でも、それをかなえるために苦しくなってしまっては本末転倒です。
 
この問題を解決するためには、ある見落としているポイントに気づく必要があります。
 
それは「等身大」とは、結局「縦軸」だということ。
 
より「高い方」がいいという「軸」。
 
しかも、年収、地位、仕事の実力、学歴、子供の成績、パートナーの美醜というだいぶ偏った「縦軸」だということです。
 
つまり、世間で語られている「等身大の自分で生きる」とは、「本来なら高い方がいいけど、無理なら我慢するしかない」という意味でしかない。
 
かんたんに言うと「あきらめろ」という一言に集約されてしまうのです。
 
「縦軸」の高みを目指して生きるのか、低いところであきらめて生きるのか。
 
この二択しかないような語られ方をしているから、どちらに進んでも、たいていの人はかなえられずに苦しくなってしまうのです。
 
だから重要なのは「等身」という基準だけではない、もっと広い視点に立った「軸」をもつことです。
 
その「軸」とは、いったいなんでしょうか?
 
それは「自分に合っているか」という「軸」です。
 
じっさいの人間も「等身」、つまり身長という「軸」だけではないですよね。
 
服を「等身」だけで選ぶ人はいないでしょう。
 
肩幅もあれば、体重もあれば、顔の大きさもあれば、肌の色や髪の色、筋肉の量などさまざまな「軸」が無数にあります。
 
それらをまとめて、結局は「自分に合っているかどうか」という視点で、服を選ぶのではないでしょうか。
 
人生も同じ。
 
「自分に合っているか」が重要なのです。
 
「等身」は、その基準のなかの一つでしかありません。
 
たしかに「等身大の自分」を受け入れることは大切です。
 
そのための強さを身につけることも、とても重要だと私も思います。
 
しかしもっと重要なのは「自分に合っているかどうか」ということ。
 
その広い「軸」を見ずに「等身」だけで語るから、結局は「あきらめる」「ヤセ我慢する」という発想に追い込まれてしまう。
 
でも「自分に合っているかどうか」で考えていけば、選択肢は無数に生じてくる。
 
あらゆる方向に、人生を充実させられる手段が見えてくるのです。
 
もしあなたが「等身大の自分」で生きようとして疲れてしまったのなら。
 
視点を広げて「自分に合っているか」という「軸」で世界を見てみてください。
 
きっと新しい人生の道が見えてくるはずです。
 
Brain with Soul代表
生きづらさ専門カウンセラー
しのぶかつのり(信夫克紀)
 

関連コンテンツ

「ありのままの自分」というやっかいな問題
 

 

生きづらい人生の歩き方 <目次>

1.AI時代に生き残る仕事
2.「世界一即戦力な男」に見る引きこもり脱出の糸口
3.これからのビジネスの成功法則
4.善人なんていない
5.お金は好きですか?
6.「お金もうけ」にとらわれなくなる話
7.「リア充」を目指すより
8.我慢してるのに自分勝手と言われる
9.生きづらさの正体
10.死んでも世界はつづくのか?
11.実存を充実させる生き方
12.他人の目が気になる人へ
13.「ジツ充」の極め方
14.不安の上手な対処法
15.変えられること、変えられないこと
16.「変えられること」の見つけ方
17.感情に飲み込まれない方法
18.人に拒絶されると傷ついてしまう
19.人生を変える方法
20.人生が変わる瞬間に必ず起こる問題
21.「心の空間」を生きる
22.話が噛み合わないと感じるなら
23.人生に疲れ果てたとき
24.「自分らしさ」とは何か?
25.AIと張り合うくらいなら
26.ジツ充とジコチュウの違い
27.社会に絶望している人へ
28.ネガティブ思考を変える適切な方法
29.仕事は三つもつ
30.心の健康法の効果が出ない理由
31.ベーシックインカムで将来も安心?
32.「悩み解決書」で悩みが解決しない理由
33.生きづらさを癒す一つの方法
34.もっとクヨクヨ考えよう
35.仕事を三つもつ理由
36.好きなことを仕事にする…?
37.苦しみの使い方
38.向かい風を追い風にする生き方
39.行動力を身につける方法
40.お金との上手なつき合い方
41.自己洗脳と自己欺瞞
42.人並みという幻想
43.元気がないと幸せになれないのか?
44.社会の常識に振り回されない
45.気が休まらない…
46.綺麗事に気づいてしまう人
47.生きづらい人が起業を成功させられる理由
48.そんなかんたんな話じゃない
49.人に気をつかい過ぎて疲れしまう
50.悩み過ぎて体がガチガチ
51.正解なんてない
52.心に余裕がない
53.誰に相談したらいいのかわからない
54.やる気はどこから湧いてくる?
55.人と対立してしまう
56.許すか、許さないか
57.生き方を決める
58.好きなこと探しの迷宮
59.生きづらさは誰のせい?
60.集中しすぎてしまう
61.居場所がない
62.不用意に交友関係を増やそうとしない
63.自分を最強の味方にする方法
64.世間のしがらみから脱け出したい
65.あと一歩が踏み出せない
66.なぜメンタルが弱いのだろう…?
67.苦手なことへの適切な対処法
68.心配ごとが頭から離れない
69.認められたいのに認めてもらえない
70.引きこもりは「悪いこと」なのか?
71.楽に生きたい
72.失言が多いので減らしたい
73.誰も心配してくれない
74.お金の上手な使い方
75.やる気が出ないのはなぜなのか?
76.深く悩んでいる人の方が「えらい」のか?
77.生きづらい人が幸せになりたいなら
78.この人と結婚していいのか?
79.心が敏感な人向けの対処法から抜け落ちている視点
80.人生を変えられる人と、変えられない人の違い
81.親が嫌いな自分はおかしいのか?
82.著名人と自分を比べてしまう
83.自分を信じられない
84.上司や部下に言うことを聞いてもらえない
85.劣等感は克服も解消もしなくていい
86.ポジティブシンキングがうまくできない
87.結果だけで判断される社会
88.「自分がされたら嫌ことは他人にしてはいけない」の嘘
89.「性格が悪い」と言われてしまう
90.「ありのままの自分」というやっかいな問題
91.「お金」以外に8つの基準をもとう
92.どうしてこんなにつらいのに誰にも伝わらないのだろう?
93.仕事が恐い、職場が恐い - その恐怖の正体と解決策
94.「恩知らずな人」を許せない
95.他人を不愉快にさせてしまう
96.「等身大の自分」という言葉にひそむ罠
 


おかげ様でコラム数500本突破!

読むと心が強くなるコラム

「読むだけで生きる勇気が湧いてくる」と大好評をいただいている、しのぶかつのり(信夫克紀)の連載コラムです。
もちろん<無料>でお読みいただけます。