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この世界を知り、生きづらさから脱け出す

 

Brain with Soul現象

 


第29回
今っぽいもの

 
今までこのコラムでは、生きづらさから脱け出すために、『世界=自分』という視点をとおして、この世界の仕組みを見てきました。
 
そして、脳の扁桃体ユニットといった、心の空間を広く自由に飛ぶための仕組みについてもくわしく見てきました。
 
とはいえ…。
 
やはり、今自分の前にありありと見える『この世界』とは、いったいなんなのだ?
 
手に触れ、ぬくもりすら感じる、あきらかに『目の前に在る』この世界とはいったいなんなのだ?
 
そんな根本的な疑問が、心の中央にドスンと残ってしまっているのではないでしょうか。
 
たしかに、
 
「目の前にあるこの世界はなんなのだ」
 
と問われると、今まで見てきた内容だけでは、到底うまく説明できないような気がします。
 
そこで、いよいよここからは、目の前にありありと見える『この世界そのものの仕組み』について、くわしく見ていきたいと思います。
 
その先に、自分がなぜ『この世界』のなかで生きていくのかという、『生きる意味』の手がかりが見つかるかもしれません。

目の前に広がる『この世界』。
 
あなたは、今、目の前に三次元の空間を感じ取っていることでしょう。
 
それと同時に、刻々と流れていく時間を感じ取っていることでしょう。
 
まさに『今』この瞬間も。
 
では、この『今』とは、いったいなんなのでしょうか?
 
私は『意識の正体』の中で、「意識が感じ取る0.5秒前に、脳は意志を決めている」というエピソードをさせていただきました。
 
これは、私たちが『今』だと思っていた『今』は、じつは『今』ではなかったということです。
 
あなたはこのエピソードを目にしたとき、なんだか不思議な気もちになったかもしれません。
 
もしかすると、不安にもなったかもしれません。
 
『今』は『今』じゃないのか…、と。
 
では、0.5秒前が『今』なのでしょうか?
 
そんなことはありませんよね。
 
それぞれの感覚器官から入った情報が、脳へたどりつく時間はまったく同時ではありません。
 
わずかながら、バラバラにずれています。
 
たとえば「目」から入った情報と「耳」から入った情報では、耳から入った情報の方が速いと考えられています。
 
また、「これが今だ」と感じる「時間の幅」も、感覚器によって違うのです。
 

<引用>
同時性の窓の幅は視覚では20~30ミリ秒であるのに対し,聴覚では約5ミリ秒、触覚では約10ミリ秒であった。視覚の時間解像度は聴覚や触覚と比べて低いのである。

 
(引用元:一川誠「錯視からわかる視覚の時間特性」
 
そのような、バラバラのタイミングで受け取った情報を組合わせたものを、あなたは『今』だと感じているわけです。
 
つまり、あなたの意識に映る『今』は、違う時間に存在していた情報を合成して造りあげられた『今』なのです。
 
言い換えれば、それは『今』があるというよりも『今っぽいもの』があるだけだということ。
 
それが、ふだん私たちが感じている『今』です。
 
では、私たちが感じていないとき。
 
そこに『今』はあるのでしょうか。
 
純粋な『今』という時間が、存在しているということなのでしょうか?
 
誰にも見られることも、聴かれることも、触れられることもない、とてもさみしい『今』の空間があるのでしょうか?
 
それとも、なにか別のものがあるのでしょうか?
 
何もないのでしょうか…?
 
この問いに答えるためには、『今』のおおもとである『時間』について考える必要がありそうです。
 
『時間』とはなんなのか?
 
次回はそのことについて、探っていきたいと思います。
 
Brain with Soul代表
生きづらさ専門カウンセラー
しのぶ かつのり(信夫克紀)
 
参考文献
一川誠「錯視からわかる視覚の時間特性」『光学39巻2号』日本光学会

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