人に嫌われるパターン
嫌われてよかった
第5回
人に嫌われるパターン
「嫌われ上手」な人は、なぜ他人を責めるより、自分を変えることで人間関係を良好に築こうと考えているのにもかかわらず、人に嫌われてしまうのでしょうか?
その謎を解くキーワードは、「悪循環」です。
「嫌われ上手」な人はある悪循環、つまり、
「人に嫌われるパターン」
にハマっていて、それに気がつくことができないでいるために、あらゆるコミュニティの中で、
「どうしても人に嫌われてしまう」
という問題を抱えることになるのです。
たとえば、「宣戦布告」タイプであるために、人に嫌われてしまう女性Aさんがいます。
Aさんは、そのことに深く悩みつづけ、そんな自分をなんとか変えたいと思っている人、つまり「嫌われ上手」です。
Aさんは、すぐに人を責めたり、人の意見を否定することをやめ、相手をとにかく肯定し、褒めることにしました。
そして、そんな自分の「好意」が相手により伝わりやすいように、
「そう思います、本当にそのとおりだと思います。」
「すごい、○○さんはすごすぎる。私じゃ絶対にかなわないなぁ」
と、肯定や賞賛の言葉をできるだけ強調して表現するようにしました。
しかし、相手は怪訝な顔をするばかりで、いっこうにAさんの会話に乗ってきてくれません。
そこで自分の「好意」がちゃんと相手に伝わり、よろこんでもらえるように、さらに肯定や賞賛の表現を大きくすることにしました。
すると、相手はよろこぶどころか、苦笑いをして立ち去ってしまいました。
以前よりも周囲の人たちから距離を置かれるようになってしまったAさんは、悩んだすえ、自分の会話が面白くないために相手が自分と話しをしてくれないのではないかと考えるようになりました。
そこで、数人での雑談に加わったさいに、誰かが面白い話をしているときに、
「あ、私なんて昨日…」
と、その人よりも、もっと面白い話をするように努力しました。
そしていかに自分が本来面白い人間であるかを知ってもらうために、学生時代にクラスの中心的な存在であったエピソードをたくさん話してみました。
さらに実際に、社内コンペや大そうじなど、職場のイベントがあるときには、率先して、
「私がやります!」
「私がまとめます!」
と中心役を引き受けるようにしました。
それでもやはり努力は報われず、Aさんだけ飲み会に誘われなかったり、ランチに誘われない状況がつづきました。
Aさんは、もっともっとみんなの役に立つ存在として認めてもらわなければ状況は変わらないと考え、困っている同僚や部下を見かけたら、
「部署は家族みたいなものだから。私のこと、本当のお姉さんだと思って、何でも話してみて。」
と声をかけるようにしてみました。
そして、もっとみんなと距離を近づけ親しくなれるように、あまり話しをしたことのない後輩を食事に誘って、
「実は私、小さい頃に親が離婚してね」
と自分の過去についても打ち明け、
「いつか人って必ず死ぬんだよね…」
と、自分の普段思っていることを正直に心を開いて話しをするようにしました。
しかしそのかいもなく、Aさんのそばからは、ますます人がいなくなってしまったのです。
いかがでしょうか。
この一連のAさんの行動を見てみると、お気づきのとおり、嫌われ上手の7つのタイプの行動がいくつもいくつも入っていることがわかります。
「宣戦布告」タイプであることから脱け出し、良好な人間関係を築くためにとった行動が、
「大げさ」タイプ
「俺が私が」タイプ
「領空侵犯」タイプ
の行動になってしまい、かえって嫌われることになってしまう。
努力しても成果はあがらず、それどころか努力すればするほど状況が悪化していくという、
「悪循環」
におちいってしまったのです。
たとえ人に嫌われるタイプの人でも、「嫌われ上手」ではない人、つまり嫌われることにあまり悩んでいない人は、7つのタイプのどれか一つにとどまっていることが多いものです。
そのため「悪循環」におちいることもありません。
そして、そのような人は、自分を変えてまで無理に相手に合わせようとせず、毅然と自分の意志を示すことが多いので周囲の人に、
「敵に回してはやっかいだ」
と感じさせ、露骨に嫌われることがなかったりもします。
ただし、それが「嫌われ上手」な人をさらに悩ませるのです。
なぜあの人も同じように嫌われるような態度をとっているのに、自分だけ露骨に嫌われ、四面楚歌にまでなるのか…と。
その思いが、
「自分を変えなくては」
という考えをさらに強くし、「悪循環」に拍車をかけてしまうのです。
ではなぜ、その「嫌われ上手」な人による自分を変える努力は、Aさんのように、ものの見事に人に嫌われる方ばかりに向かってしまうのでしょうか?
その原因とは、いったいなんなのでしょうか?
Brain with Soul代表
生きづらさ専門カウンセラー
信夫克紀(しのぶ かつのり)
おかげ様でコラム数500本突破!