<むなしさ>の心理学-諸富祥彦
諸富祥彦の名著を味わう
<第一冊目>
<むなしさ>の心理学
◆こんな時に読むのがオススメ
・すべてが虚しいと思えたとき
・ふと、やる気を失ったとき
・自分が空虚だと感じたとき
・「やりたいこと」が見つからないとき
・つまらない日常に嫌気がさしたとき
・生きる理由を見失ったとき
・いっさいは無意味だと感じたとき
レビュー
この「<むなしさ>の心理学」の斬新さは、残り100ページ以上(約半分)を残して、「それまではこの本は、ここから先は読まなくてもいい。どこかにしまっておいていい。」と読者にすすめてしまっている点にあるでしょう。
実はこの作品は、上に紹介したような、自己を妥協なく見つめる生き方を求める前に、本の前半を使って、まずは「自分の幸せ」を得ること優先するように論じています。
そして、なぜむなしくなってしまうのかという原因を、現代社会のあり方から的確に指摘して、むなしさを感じている人にしっかりと著者の心を寄せています。
さらに、そこから脱け出すための具体的な方法を、心理療法や私たちもよく知るアダルトチルドレン論などにもとづいてレクチャーしてくれているのです。
ただ、そのような「当り前の方法」では、苦しみから脱け出せない人がいる。どんなに努力してもその激しい苦しみに追い立てられて、今にも押しつぶされそうになっている人がいる。
後半は、そのような「深い苦しみ」にあえぐ人たちに向けた、濃密な内容になっているのです。
「もはや、あれが、これがむなしいというのではない。すべてがむなしい。あれこれを含んだ人生の総体がむなしいのだ。」
(出典:諸富祥彦/「むなしさの心理学」/講談社現代新書)
私はこの本を初めて読んだとき、大変僭越ながら、「この人は信用できる」「この人は本当の苦しみを知っている人だ」と感じました。
それは、本書の内容が、表面的に「これで解決するはず」と言われている原因や対処法だけではなく、「この世界」のありよう、つまり「トランスパーソナル」な視点からも、むなしさや悩み苦しみをとらえていたからです。
日常とトランスパーソナル。
その両方の視点から、具体的な解決策を提示している。その「リアルさ」こそが、名著「<むなさしさ>の心理学」の最大の特徴であり、魅力ではないでしょうか。
せわしない日々の中で、突然、すべてが空虚に感じられ、人生そのものがむなしいと感じたとき。
その切実なむなしさがなぜ湧きおこったのか?
そして、そこにはどんな意味があるのか?それを「本当に知りたい人」に、ぜひおすすめしたい一冊です。
レビュー:しのぶかつのり(信夫克紀) (Brain with Soul代表)
<むなしさ>の心理学
諸富祥彦:著/講談社:刊/講談社現代新書
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