どうしても許せない人がいるのなら
しない努力
第13回
許さない努力
┃許そうとしても許せないとき
あなたには、どうしても許せない人がいるでしょうか?
今でも、思い出せばこらえきれない怒りや恨み、憎しみや悲しみが押し寄せてくる。
それほどまでに許せないできごとがありますでしょうか?
あまりの苦しさに、「許せば楽になれる」と考えたことも一度や二度ではないはずです。
そして、長いあいだずっと「許す努力」を、重ねてこられたかもしれません。
その結果、たしかに許せた瞬間もあった。
とても心が軽くなった。
でもまたやってくるのです。
あの怒りや恨み、憎しみや悲しみが。
荒波のようにくり返し押し寄せては、自分のなかの穏かさを打ち砕いてしまう。
たとえようのない、あの激しい感情のうず…。
あなたがもし、こんな苦しい思いを今もなさっているのなら。
私にはお伝えしたいことがあります。
「許さない努力」をして欲しいと。
多くの方が、許す努力を延々とつづけているために苦しんでいます。
カウンセリングの現場でも、強くそのことを実感します。
だから、あえて「許さない努力」にチャレンジする意味をお伝えしたいのです。
┃誠意の通じない相手には「許さない努力」
許す努力によって許せるのであれば、もちろんそれに越したことはありませんよね。
許すためには、まず「感謝をする」という方法をとる場合が多いのではないでしょうか。
今までしてもらったこと、助けてもらったことをたくさん思い浮かべる。
そして「あの苦しいできごとには、自分にも責任があったのだ」と考えてみるわけです。
この方法によって許せる範囲のことであれば、許してしまうことが一番いいですよね。
それは、許せないという感情を相手への感謝の思いで「上塗り」できたということですから。
無事に「上塗り」ができれば、許せなかった期間中に相手にとってしまった身勝手な態度を反省したり、謝ることすらできるかもしれません。
じっさいにそうすることが、誠実ですよね。
しかし、そんなあなたの努力や誠意さえ通じない相手がいるのが現実です。
あなたが相手を思いやり、あなたが手に持った剣を自分自身に向けた瞬間に、相手はその剣を押してあなたを平気で貫くのです。
そしてあなたの許せない思いは頂点へと達し、もはや感謝や自己責任で「上塗り」できない状態になってしまう。
だから、思い切って恨み尽くそうと決心する。
こんどは、恨みで感謝を「上塗り」しようとしてみる。
でも、やっぱりそこまで相手を責めきれない。
感謝を捨てて相手だけを責めることに後ろめたさを感じてしまうのです。
そして、またまじめに許す努力をつづける。
感謝をしようとしつづける。
しかし、やっぱり感謝しきれず、いつまでも許せないでいる自分を責めてしまう。
恨みと感謝のあいだで引き裂かれてしまう…。
もしあなたが、そのくり返しで苦しんでおられるのなら。
「許さない努力」を試してみて欲しいのです。
┃恨みは恨み、感謝は感謝
なにも「絶対に許さないぞ!」と、怒りや恨み、憎しみや悲しみを増幅させて欲しいとお願いしているわけではありません。
あなたを苦しめている正反対の二つの感情を「同居」させることを試して欲しいのです。
恨みで感謝を「上塗り」しようとしてもできない。
感謝で恨みを「上塗り」しようとしてもできない。
ならば、恨みと感謝をあなたの中に「同居」させてしまってください。
相手に対して恨みと感謝を同時にもってはいけないという決まりなんてありません。
恨みは恨み。
感謝は感謝です。
正反対の感情であっても、あなたのなかに「同居」させてしまっていいのです。
許せない相手に対して、堂々と感謝の気持ちをもってもいいのです。
許せないまま、感謝してもいいのです。
相手を恨んだまま、
「まあでも、私のためにあんなことしてくれたよな。本当にありがたいことだ。だからといって、許せないけどね。」
と考えても、まったくかまわないのです。
だから、許さないまま感謝する。
こうすることで、あなたが正反対の感情に引き裂かれて苦しむことはなくなるはずです。
「許さない努力」は、あなたのように人のせいにしきれずに、どこまでも自己反省をくり返してしまう人の、燃え盛るような恨みの感情を楽にしてくれます。
あなたが経験したような深く複雑な苦しみを、恨みか感謝のどちらかで 「上塗り」 するなんて、かんたんにはできなくて当然です。
あなたが、どうしても許せない相手を、無理に許そうとしつづけて力尽きてしまったのなら。
ぜひ「許さない努力」を試してみてくださいね。
Brain with Soul代表
生きづらさ専門カウンセラー
しのぶ かつのり(信夫克紀)
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しない努力 <目次>
1.なんだかわからない焦りの解消法 - しない努力のススメ
2.ストレスがたまる一方なのは感謝のし過ぎ? - 「感謝しない努力」
3.ネガティブな感情に振りまわされない方法 - 「自分のせいにしない努力」
4.平常心を保つためのちょっとしたコツ - 「動じない努力」
5.怒りをしずめることに疲れ果てたら - 「怒りをしずめない努力」
6.自然と怒りがわいてこなくなる方法 - 「期待しない努力」
7.自信はつけるものではなく出てくるもの - 「迎合しない努力」
8.他人を攻撃するのは自信がないから - 「攻撃しない努力」
9.自己顕示欲が強いのは劣等感があるから - 「自己顕示しない努力」
10.焦り、義務感、後悔を同時に予防する方法 - 「したがわない努力」
11.腹の立つ相手のことが頭から離れないとき -「対峙しない努力」
12.他人を本当に理解することはできるのか? - 「理解しない努力」
13.どうしても許せない人がいるのなら -「許さない努力」
14.あのときこうすればよかった… -「後悔しない努力」
15.生きづらさを突破する最後の手段 -「あきらめない努力」
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