この世界を知り、生きづらさから脱け出す
Brain with Soul現象
第7回
何も決まっていない
前回は、私たちの『意識』の生まれる仕組みの入口まで説明しました。
その仕組みを、物理世界の歴史(自然史)に当てはめてみたわけです。
すると、『意識』が何かを決めているわけではなく、決まったことをただ受け取っているだけの「受動的なはたらきだ」ということが見えてきました。
つまり、『意識』は自然や意志の働きの「結果」に過ぎないということ。
ではあなたの人生も、この物理世界がはじまったときに、すでにすべてが決まってしまっているのでしょうか?
決められた道を、ただたどっているだけなのでしょうか?
そんなことはありません。
あなたの人生には、決まっていないことがたくさんあります。
いえ、決まっていたけれど、それを変えてしまうはたらきが存在しているのです。
実は、前回ご紹介した脳内の流れの中には、その働きが記されていませんでした。
その働きの名は、
『ゆらぎ』
です。
ゆらぎとは、意志が「こうしよう」と決めたことを確率的に変えてしまうはたらき。
あなたの脳の中には、このゆらぎが常に存在しているのです。
<引用>
In conclusion, even in simple CA1 circuits, neurons can work in harmony together to make an organized output to the cortex although their individual responses are ostensibly unreliable and stochastic.
<訳>
結論として神経細胞たちは、単純なCA1回路においてでさえ、皮質に対して計画された出力をするために調和して活動できるものの、それらの個々の反応については表面上は信頼できず、確率的である。
引用者注:「CA1」とは、記憶に関係する「海馬」の3つの領域のうちの一つです
※訳は引用者による
(引用元:Takuya Sasaki et al.「Integrative spike dynamics of rat CA1 neurons: a multineuronal imaging study」)
前回は、意識の生じる流れを、下のように説明しましたよね。
意志が何かを決める
↓
脳が指令を出す
↓
体(思考)が働く
↓
意識が生じる
この流れに。
ゆらぎの存在をふくめて、あらためて見てみましょう。
意志が何かを決める
↓
脳が指令を出す
↓
ゆらぎが影響を与える
↓
体(思考)が働く
↓
意識が生じる
つまり、意志が「こうしよう」と決めても、ゆらぎの影響で思いどおりにならないことが多々ある、
『体』も『思考』も『意識』も、意志のとおりにならないことがあるとうことです。
それは、あなたも日頃ご経験されていますよね。
ゆらぎで「結果」は変わってしまうのです。
このゆらぎというもの。
脳内だけではなく、物理世界の全体に広がっています。
みんなみんな、なんらかのゆらぎの影響を受けてしまうのです。
空にうかぶ「月」ですら、その存在はゆらいでいます。
<引用>
電子のようなミクロの物質の場合は、私たちが見てない時には「どこか一ヵ所にいる」のではなく、「ここにいるともあそこにいるともいえる」という状態になっています。そしてこの考えを突き詰めると、ミクロの物質の集合体である月についても、誰も見ていない時には「どこか一ヵ所にいる」と断言できなくなるのです。
たしかにこの物理世界には、はじまりのときに決められた「法則」が存在しますよね。
同時にその法則どおりにはいかない、
『ゆらぎ』
も存在しているのです。
その 「結果」 として生じるのが『意識』。
法則+ゆらぎ=『意識』
必然+偶然=『意識』
ということ。
すでに決まっている「結果」なんて、なに一つない。
言い換えれば、この世界は、
『何も決まっていないも同然』
なのです。
だから、あなたの人生もすべてが決まっているわけではないのです。
たとえ、生きづらさを抱えているとしても、ずっとそのままではありません。
あなたの人生は、変わっていく可能性を常に秘めているのです。
でも、これだけではまだ大きな不安が残ってしまいますよね。
そう。
「結局ただ流されていくしかないの?」
「私の自由な意志はないの?」
という不安です。
そこで次回は、あなたの『意志』のありかについて、引きつづきこの物理世界にあてはめてお話していきたいと思います。
Brain with Soul代表
生きづらさ専門カウンセラー
しのぶ かつのり(信夫克紀)

・ジャック.モノー「偶然と必然」みすず書房
・Takuya.Sasaki et al.「Integrative spike dynamics of rat CA1 neurons: a multineuronal imaging study」The Journal of Physiology Volume574,Issue1,July 2006
・佐藤勝彦「図解 量子論がみるみるわかる本」
Brain with Soul現象 <目次>
1.生きづらさから脱け出す物語
2.意志と感情の源泉をさがして
3.濃さの違い
4.ネットワークの結果
5.内側から伸びる世界
6.意識の正体
7.何も決まっていない
8.あなたの意志のありか
9.生きづらい意識が生まれる仕組み
10.生きづらさ、その第二の源泉
11.生きづらい思考回路
12.精神
13.Brain with Soul現象
14.扁桃体が世界の性質を決める
15.扁桃体の本質
16.強烈な幸せ
17.心の空間
18.意識内世界と意識外世界
19.意識画素
20.意識の内容が決まる仕組み
21.『ものごころがつく』とは?
22.モラルユニット
23.モラルユニットをしずめる準備段階
24.しずめる?しずまる?
25.ニードユニット
26.ウォントユニット
27.ウォントユニットの宿命
28.クリアカットできない
29.今っぽいもの
30.時間とは?
31.信号
32.物理空間プログラム
おかげ様でコラム数500本突破!