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迎合を止める方法(1)

 

虐待の後遺症第12回 迎合を止める方法(1)

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虐待の後遺症

 

第12回
迎合を止める方法(1)

 
自分の迎合を止めたい、そう思う誰もが真っ先に取り組むことは、その行動を意志の力で抑えつけようとすることです。
 
つまり、迎合の衝動コントロールしようとするということ。
 
たとえば、不機嫌に黙り込む相手を見ているとき。

自分のせいかどうかもわからないにもかかわらず、なんだかすごく息苦しくなってきて、用事もないのに話しかけて機嫌をとろうとしてしまいたくなる。
 
そんなとき、
 
「無理に話しかける必要なんてないんだ。」
「私が原因じゃないかもしれないじゃないか。」
「誰だって機嫌が悪いときくらいある。気にしなくていいんだ。」
「ここで機嫌をとったら、またあとで落ち込むだけだぞ。」
 
という風に、迎合の衝動を抑えつけ、行動をコントロールしようとするのです。
 
しかし、このように真正面から取っ組み合うような方法では、衝動を消し、迎合を防ぐことはできません。
 
なぜなら、迎合の衝動を抑えつけてコントロールしようとすればするほど、反対に、迎合の衝動は強くなってきてしまうからです。
 
そして、そのコントロールしようとする意志に猛烈に反発するように、まったく正反対の言葉が、自分の中に渦巻きはじめるのです。
 
「もしかしたら、私の昨日の返事をそっけないと思って、腹を立てているのかもしれない。」
 
そんな不安が頭をよぎり、やがて、
 
「こんな空気のまま一緒にいる方が、お互いにとって不健全だよな。」
「機嫌が悪そうなときに話しかけることは、優しさだよね。」
「今から声をかけるのは、迎合じゃなくてコミュニケーションだ。」
 
といった、迎合を正当化するためのありとあらゆる理由が浮かびあがってくるのです。
 
ついには、その声に押し流され、息苦しさと不安に耐えられなくなり、自分の意志とは無関係に、
 
「なんだか今日は寒いよね。」
「そのスカーフ素敵だね、どこで買ったの?」
 
と話しかけ、機嫌をとり、相手の顔色をうかがってしまう。
 
その声を聞いた相手は、不機嫌そうに見えた表情をパッと変え、
 
「ああ、寒いよねぇ~。これ?昨日、新宿で買ったの!似合う?」
 
と、何事もなかったかのように、機嫌よく受け答えをします。
 
その態度を見て、相手の機嫌が悪そうに見えたのは、自分の取り越し苦労であったことを知り、心の底から安堵するとともに、
 
「また、余計な迎合をしてしまった…。」
 
と落ち込むことになるのです。
 
ではなぜ、このように、真正面から迎合の衝動を抑えつけコントロールするような方法は、迎合の衝動の反発を招いてしまうのでしょうか?
 
それは、私たちの脳にある扁桃体』という部位が、「コントロール」されることをとても嫌うから。
 
つまり、「不自由」にさせられることを猛烈に嫌がるからです。
 
だから、抑えつけられそうになると、私たちは猛烈に反発してしまうのです。
 
扁桃体は、目の前の出来事が自分にとって、危険かどうかを判断する審判員であり、私たちの脳の中でも、古くから存在していると考えられている、動物の本能に近い部分です。
 
この扁桃体が、目の前の対象を危険だと感じることで、私たちは、怒って反発したり、怯えて逃げたりすることができる。
 
つまり、他者からのコントロールから逃れ、不自由な状況を打破するための行動をとることができるわけです。
 
その「危険だ」と感じる判断は、たとえその対象が自分であったとしても同じことです。
 
だから、先ほどの例のように、迎合の衝動に対して、真正面から自分に「迎合するな」と抑えつけてコントロールしようとしても、反対に迎合しようとしてしまう。
 
迎合してはいけない、迎合してはいけない、そう思えば思うほど、迎合するための方法を考え出そうとしてしまうのです。
 
このように、自分の困った衝動や行動の癖に対処するときに、迎合にかぎらず、私たちはついつい、真正面からその衝動を抑えつけようとしたり、行動をコントロールしようとしてしまいます。
 
しかし、この方法は、今見てきた理由のとおり、逆効果になってしまうことがほとんどなのです。
 
あなたも、ご経験があるのではないでしょうか?
 
自分を抑えつけ、コントロールしようとすればするほど、その反動で真逆の行動をとってしまうということが。
 
それは、私たちの本能に逆らうことになってしまうから。
 
私たち人類が長いあいだ生き伸びてきた、危険回避の仕組みからもたらされる、強いつよい反発だったのです。
 
では、どうすれば、その本能とも言える強い反発を抑え、今テーマとなっている迎合を防ぐことができるのでしょうか?
 
その方法は、真正面から抑えつけ、コントロールするのではなく、『許可』を出すのです。
 
「あれをするな」「これはやめろ」と抑えつけ、「あれをやれ」「これをやれ」とコントロールするのではなく、
 
「もう、それをしなくていいんだよ。」


と、自分で自分に許可を出してあげるのです。
 
不機嫌な相手の顔を見て、迎合の衝動がわいてきたとき、その息苦しさから、ついつい私たちは、
 
「悪く考えるな」
「気にするな」
「不安になるな」
 
とその衝動を抑えつけようとし、
 
「話しかけるな」
「機嫌を取ろうとするな」
 
と行動をコントロールしようとします。
 
しかし、不自由を感じた扁桃体は、今の状況を危険だと判断し、反対に不安を増長させ、迎合するように私たちを仕向けようとします。
 
そこで抑えつけ、コントロールするのではなく、許可を出す。
 
迎合の衝動がわいてきた時点で、自分で自分に許可を出してあげましょう。
 
「もう、無理に話しかけなくてもいいんだよ。」
「もう、機嫌をとらなくてもいいんだよ。」
 
こんな風に、優しくやさしくいたわるように許可を出してあげるのです。
 
こうすることで、迎合の衝動を増長させる扁桃体の反発を防ぐことができます。


そのため、言葉が自然と自分に受け入れられ、迎合の衝動はしずまっていくのです。
 
もしあなたが、このように自分で自分に許可を出してあげたとき。

あなたは、心の中にあった大きな「つかえ」がとれたような心地よさを感じるかもしれません。
 
煙がやわらかな風に吹かれて散るように、あくまでも自然に衝動が消え去っていく、そんな感覚。
 
箱の中の衝動が暴れないように、力づくでフタをして無理やり閉じ込めるのではなく、箱の底を抜きさえすれば、衝動は自ら流れ出て、どこかへ消えていくのです。
 
そもそも、迎合したくはないのですから、それが自然なのです。
 
ただし、さらに強烈な迎合の衝動をともなっている場合は、このような許可を出したとしても、それすらも扁桃体に「コントロールである」とみなされてしまう場合があるでしょう。
 
次回は、そのための対処法をご紹介します。
 
 
Brain with Soul代表
生きづらさ専門カウンセラー
信夫克紀(しのぶ かつのり)
 

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