更新日:2021年3月16日

「してあげた」という親心

 

アダルトチルドレンを本気で克服する方法

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アダルトチルドレンを「本気」で克服する方法

 

第20回
「してあげた」という親心

 

┃こんなに「してあげた」のになぜ親を責めるのか?

 
「してあげた」という言葉があります。
 
我が子がアダルトチルドレンであると自覚されている親御さんからよく聞く言葉です。
 
子供のために、本当にさまざまなことを「してあげた」。
 
にもかかわらず、なぜ私の子供は社会にうまくなじめず、生きづらいと言うのか。
 
なぜ、親である私たちを責めるのか。
 
カウンセリングの現場で、こんなご相談をしばしばお受けするのです。
 
そのような親御さんに、私は次のようにおたずねすることがあります。
 
その「してあげたこと」は、お子さんが「してもらいたいこと」だったのでしょうか、と。
 
自分が「してあげたいこと」をしてあげるのと、相手が「してもらいたいこと」をしてあげるのは、まったく別のことです。
 
自分が「してあげたいこと」をしてあげるのは、自分を満たす行為。
 
相手が「してもらいたいこと」をしてあげるのは、相手を満たす行為。
 
つまり、同じ「してあげた」という言葉でも、この二つはまるで別の意味です。
 
いったいどちらの意味で、「してあげた」のか。
 
親御さんに、そうたずねてみるのです。
 
じつは、この二つの「してあげた」の区別がついていない方がとても多いのです。 
 
 

┃親が「してあげたいこと」ばかりしていた結果

 
アダルトチルドレンの親御さんは、よく次のようなお話をされます。
 
あの子が小さい頃から、習い事もさせてあげた。
 
おいしいものも食べに連れて行ってあげた。
 
旅行も連れていってあげた。
 
学費の高い私立高校、私立大学にも行かせてあげた。
 
一般的な家庭よりも、ずいぶんといろいろなことをしてあげたのだ・・・、と。
 
お話を聴くと、たしかに多くのことをしてあげたのは事実なのだと思います。
 
みずからを犠牲にしてまで、してあげたことも少なくないはずです。
 
それはとても大変なことだったでしょう。
 
でも、お子さんの側からよくよく考えてみると、そのどれもがお子さんが「してもらいたいこと」ではなかった。
 
親が「してあげたいこと」だった。
 
お子さんの側は、同じ場面を思い浮かべても次のように感じています。
 
習い事もさせてもらったけれど、なにを習うかはぜんぶ親が決めていた。
 
私にはなにも決める権利がなかった。
 
おいしいものを食べに行こうと言われるけれど、
 
「今日も焼肉に行くよ!」
 
と、子供の意見も聞かずに連れていかれた。
 
毎年旅行に行くけれど、どこに行きたいか聞かれたことはない。
 
そもそも今年は旅行に行きたいのかと確認されたこともない。
 
大学までエスカレーター式である私立高校の方が「お前のためだから」と、第一志望を私立高校にされた。
 
それ以前に、まず大学に行きたいのかを問われたこともない。
 
自分はずっと美容師になりたくて、美容師の専門学校に通いたかった・・・。
 
つまり、親が子供にしてあげたことは、すべて親が「してあげたいこと」でしかなかった。
 
子供が「してもらいたいこと」ではなかったということです。
 
このような食い違いが起きているケースが本当に多いのです。
 
 

┃「親心」ばかりを優先してしまう本当の理由

 
たしかに、子供が「してもらいたいこと」ばかりしてあげていたら。
 
社会で生きていくことのできない人間になってしまうでしょう。
 
節度をもたせるためにも、子供が望まないことをしてあげる必要があります。
 
また、頼まれもしないのに我が子にアレもコレも「してあげたい」と思ってしまうのが親というものです。
 
それほどまでに自分の子はかわいい。
 
それこそが、まさに「親心」でしょう。
 
私も子をもつ親として、その気もちに100%の同意をすることができます。
 
でもその「親心」には、残念ながら読んで字のごとく「子心」が含まれていない。
 
あれをしてあげたい、これをしてあげたい、あそこに連れていってあげたい、これを買ってあげたい、将来苦労させたくない、こんなふうに育って欲しいと思うのは、すべて親のエゴでしかないのです。
 
子供がなにをしてもらいたがっているかを確認してはじめて、「親心」は「親子心」となって、子供は健全な自尊心を育てていくことができるのです。
 

参照記事
「親子心」について詳しく解説しています
親心とはたんんある親のエゴである

 
ではなぜ私たち親は、「親心」を優先して「してあげたいこと」ばかり押しつけてしまうのでしょうか?
 
その答えはとてもシンプル。
 
それは、子供の「してもらいたいこと」を優先すると自分のエゴが満たせなくなるからです。
 
たとえば、親は我が子に学校でいい成績を取ってほしいと思う。
 
体力をつけて健康でいて欲しいとも思う。
 
だから塾と水泳に通わせる。
 
しかし、子供はギターと英会話を習いたいと思ってます。
 
じっさいにそう口にしている。
 
ただ、それを受け入れると
 
「学校でいい成績を取ってほしい」
 
「体力をつけてほしい」
 
という親のエゴが満たせない。
 
そこで、
 
「ギターはすごい難しいんだぞ」
 
「語学なんてあなたにはどうせつづかないわよ」
 
と無自覚のうちに子供の「してもらいたいこと」を却下してしまい、親の「してあげたいこと」を優先してしまう。
 
結果的に、塾と水泳に通わせてしまうのです。
 
こうして親は、自分でも気づかぬうちにエゴを優先させて、子供の欲求を「雑」に扱ってしまうのです。
 
 

┃親の一番の役目とは?

 
自分の欲求をあらゆる場面で親から「雑」に扱われた子供は、自尊心がつぶされてしおれていきます。
 
しおれた自尊心で社会に出た子供は、やがて他人の価値観に振りまわされるようになります。
 
そして人生に行き詰まり、アダルトチルドレンであると自覚し、親に牙をむくようになるのです。
 
親からすれば、たくさんのことを「してあげた」のに、なんとぜいたくで甘えた子供だと思うかもしれません。
 
逆恨みとも感じるでしょう。
 
しかし・・・。
 
自分が「してあげたいこと」と、相手が「してもらいたいこと」の区別をつけることなく子育てをしてきた家庭では、どんなに親がいろいろなことをしてあげたとしても、それは子供の自尊心を踏みつぶしていたことに他なりません。
 
それどころか、してあげたことが多ければ多いほど、より多く自尊心を叩き潰してしまっていた可能性もあるのです。
 
「親心」ばかりに気をとられるのではなく、「子心」にも同じように重きを置く。
 
そうして子供の健全な自尊心の成長を見守ることが、親の一番の役目ではないでしょうか。
 
我が子が、ヨチヨチ歩きで窓際に立ち、夕焼けに染まる外を眺めている。
 
「親心」では、抱きかかえて窓を開け、ベランダに出て、夕焼けの方に顔を向けて綺麗なあかね色の空を見せてあげたくなるでしょう。
 
しかし、「子心」はそれを望んでいないかもしれません。
 
だから、親はそっと後ろからカギを外す。
 
子供は外に出たければ、自分で窓を開けて外に出るでしょう。
 
出たくなければ、そのまま引き返してくるでしょう。
 
外に出て夕焼け空を気にしていたら、抱きあげてあげる。
 
外に出ず自分のもとに引き返して来たならば、ギュッと抱きしめてあげる。
 
それが「親子心」。
 
親がしてあげられることなんて、その程度のことでしかないのですから。
 
Brain with Soul代表
生きづらさ専門カウンセラー
しのぶ かつのり(信夫克紀)
 

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アダルトチルドレンを「本気」で克服する方法 <目次>

1.アダルトチルドレンを「本気」で克服する方法
2.なぜ克服したはずの問題をくり返してしまうのか?
3.今までのアダルトチルドレン克服法が取りこぼしてきた盲点とは?
4.扁桃体が敏感だと自覚する
5.「あなたは強い」という事実
6.親を捨てる
7.アダルトチルドレン克服に欠かせない必要なこと
8.恩着せがましい親
9.一生懸命育てたのに!
10.あなたは本当に親不孝者なのか?
11.親にすべてをブチまけようと思う
12.親が子育ての非を認められない理由
13.親への仕返しが止められない
14.アダルトチルドレン克服の優先順位
15.親との対決に必要な覚悟
16.好きなこと、やりたいことがわからない
17.「誰もわかってくれない」を解決する方法
18.燃え尽き症候群をくり返してしまう
19.親との関係を良好にしたい
20.「してあげた」という親心
21.なぜアダルトチルドレンはリラックスできないのか?
22.「体」を整えることがアダルトチルドレンに必要な理由
23.「つき合う人」を変えなければアダルトチルドレンは克服できない
24.ナイーブさを捨てる
25.人に批判されるのが怖い
26.自尊心が低い
27.アダルトチルドレンの「克服」とは?
28.感情をうまく表現できない
29.鬼のような親
30.人からの評価が気になる
31.自信よりも必要なもの
32.嘘をついてしまう
33.アダルトチルドレンが承認欲求をなくす方法
34.仕事で手を抜けない
35.自己肯定感を高めたい
36.親と同じことをしてしまった
37.なぜ焦ってしまうのか?
38.不登校が許されなかった人
39.今の仕事が向いていないと思うなら
40.勇敢であるということ
41.人間関係がうまくいかない
42.孤独を磨き上げる
43.努力しても嫌われつづける人
44.いつも自分ばかり残業している
45.快楽と上手につき合おう
46.自分のなかに基準がない
47.面倒くさがりをなおしたい
48.自分に合った働き方を見つけたい
49.他人に興味がもてない
50.自分に興味がもてない
51.人の顔色をうかがう原因とその対処法
52.私は変われるでしょうか?
53.どこに行っても同じだぞ!
54.自分がわからない
55.やる前から「無理」「できない」とあきらめてしまう
56.職場の人間関係がつらい
57.自分で自分をしばりつけてしまう人
58.不自由を感じてしまう原因
59.口が悪くて孤立してしまう
60.親のせいにするのは自分の甘えなのか?
61.嫌味ったらしい言い方をしてしまう
62.明るく楽しく振るまえなくなった
63.家庭環境のせいにし過ぎと言われてしまう
64.すべてを受け入れてもらいたい
65.親への憎しみが消えない
66.自分の受け入れ方
67.一人暮らしを必死になって止める母親
68.ひどい親に育てられた
69.アダルトチルドレンが子供のしつけに迷うとき
70.ささいなことを根にもってしまう
71.なにをすればいいのかわからない…
72.無駄にプライドが高い自分がイヤになる
73.あなたのペースを乱す人への具体的な対処法
74.あなたが無理しすぎてしまう本当の理由
75.なぜあなたは努力しても報われないのか?
76.幸せを追いかけてるのに苦しいのはなぜ?
77.自分に優しくしたい、でもできない・・・
78.アダルトチルドレンがくり返し絶望におちいるパターンとは?
 


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