「してあげた」という親心

 

アダルトチルドレンを本気で克服する方法

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アダルトチルドレンを「本気」で克服する方法

 

第20回
「してあげた」という親心

 
「してあげた」という言葉があります。
 
我が子がアダルトチルドレンであると自覚されている親御さんからよく聞く言葉です。
 
子供のために、本当にさまざまなことをしてあげた。
 
にもかかわらず、なぜ私の子供は社会にうまくなじめず、生きづらいと言うのか。
 
なぜ、親である私たちを責めるのか。
 
カウンセリングの現場で、こんなご相談をしばしばお受けするのです。
 
そのような親御さんに、私は次のようにおたずねすることがあります。
 
自分が「してあげたいこと」をしてあげるのと、相手が「してもらいたいこと」をしてあげるのは、まったく別のことではないでしょうか、と。
 
自分が「してあげたいこと」をしてあげるのは、自分を満たす行為。
 
相手が「してもらいたいこと」をしてあげるのは、相手を満たす行為。
 
つまり、同じ「してあげる」という言葉でも、この二つはまるで別の意味。
 
いったいどちらの意味で、「してあげた」のでしょうか、とたずねてみるのです。
 
実は、この二つの区別がついていない方がとても多いのです。
 
アダルトチルドレンの親御さんは、よく次のようなお話をされます。
 
あの子が小さい頃から、習い事もさせてあげたし、おいしいものも食べに連れて行ってあげたし、旅行も連れていってあげたし、学費の高い私立高校、私立大学にも行かせてあげたし…。
 
一般的な家庭よりも、ずいぶんといろいろなことをしてあげたのだ、と。
 
お話を聴くと、たしかに多くのことをしてあげたのは事実なのだと思います。
 
自らを犠牲にしてまで、してあげたことも少なくないはずです。
 
それはとても大変なことだったでしょう。
 
でも、子供の側からよくよく考えてみると、そのどれもが、子供が「してもらいたいこと」ではなかった。
 
親が「してあげたいこと」だった。
 
お子さんの側は、同じ場面を思い浮かべても次のように感じています。
 
習い事もさせてもらったけれど、何を習うかは全部親が決めていた。
 
私には何も決める権利がなかった。
 
おいしいものを食べに行こうと言われるけれど、
 
「今日も焼肉に行くよ!」
 
と、子供の意見も聞かずに連れていかれた。
 
毎年旅行に行くけれど、どこに行きたいか聞かれたことはほとんどない。
 
そもそも今年は旅行に行きたいのかと確認されたこともない。
 
大学までエスカレーター式である私立高校の方が「お前のためだから」と、第一志望を私立高校にされた。
 
それ以前に、まず大学に行きたいのかを問われたこともない。
 
このような食い違いが起きているケースが本当に多いのです。
 
つまり、親が子供にしてあげたことは、すべて親が「してあげたいこと」でしかなかった。
 
子供が「してもらいたいこと」ではなかったということです。
 
たしかに、子供が「してもらいたいこと」ばかりしてあげていたら、社会で生きていくことのできない人間になってしまうでしょう。
 
節度を持たせるためにも、子供が望まないことをしてあげる必要があります。
 
また、頼まれもしないのに我が子にアレもコレも「してあげたい」と思ってしまうのが親というものです。
 
それほどまでに自分の子はかわいい。
 
それこそが、まさに「親心」でしょう。
 
私も子を持つ親として、その気持ちに100%の同意をすることができます。
 
でもその「親心」には、残念ながら読んで字のごとく「子心」が含まれていない。
 
あれをしてあげたい、これをしてあげたい、あそこに連れていってあげたい、これを買ってあげたい、将来苦労させたくない、こんなふうに育って欲しいと思うのは、すべて親のエゴでしかないのです。
 
子供が何をしてもらいたがっているかを確認してはじめて、「親心」は「親子心」となって、子供は健全な自尊心を育てていくことができるのです。
 
ではなぜ、私たち親は、「親心」を優先して「してあげたいこと」ばかり押しつけてしまうのでしょうか。
 
それは、子供の「してもらいたいこと」を優先すると、自分のエゴが満たせなくなるからです。
 
たとえば、親は我が子に学校でいい成績を取ってほしいと思う。
 
体力をつけて健康でいて欲しいとも思う。
 
だから塾と水泳に通わせる。
 
しかし、子供はギターと英会話を習いたいと思ってます。
 
実際にそう口にしている。
 
ただ、それを受け入れると
 
「学校でいい成績を取ってほしい」
「体力をつけてほしい」
 
という親のエゴが満たせない。
 
そこで、
 
「ギターはすごい難しいんだぞ」
「語学なんてあなたにはどうせつづかないわよ」
 
と無自覚のうちに子供の「してもらいたいこと」を却下してしまい、親の「してあげたいこと」を優先してしまう。
 
結果的に、塾と水泳に通わせてしまうのです。
 
自分の欲求をあらゆる場面で親から「雑」に扱われた子供は、自尊心がつぶされてしおれていきます。
 
しおれた自尊心で社会に出た子供は、やがて他人の価値観に振り回され、行き詰まり、アダルトチルドレンであると自覚し、親に牙をむくようになるのです。
 
親からすれば、たくさんのことをしてあげたのに、なんとぜいたくで甘えた子供だと思うかもしれません。
 
逆恨みとも感じるでしょう。
 
しかし、自分が「してあげたいこと」と、相手が「してもらいたいこと」の区別をつけることなく子育てをしてきた家庭では、どんなに親がいろいろなことをしてあげたとしても、それは子供の自尊心を踏みつぶしていたことに他ならない。
 
それどころか、してあげたことが多ければ多いほど、より多く自尊心を叩き潰してしまっていた可能性もあるのです。
 
「親心」ばかりに気をとられるのではなく、「子心」にも同じように重きを置く。
 
そうして子供の健全な自尊心の成長を見守ることが、親の一番の役目ではないでしょうか。
 
我が子が、ヨチヨチ歩きで窓際に立ち、夕焼けに染まる外を眺めている。
 
「親心」では、抱きかかえて窓を開け、ベランダに出て、夕焼けの方に顔を向けて綺麗なあかね色の空を見せてあげたくなるでしょう。
 
しかし、「子心」はそれを望んでいないかもしれません。
 
だから、親はそっと後ろからカギを外す。
 
子供は外に出たければ、自分で窓を開けて外に出るでしょう。
 
出たくなければ、そのまま引き返してくるでしょう。
 
外に出て夕焼け空を気にしていたら、抱きあげてあげる。
 
外に出ず自分のもとに引き返して来たならば、ギュッと抱きしめてあげる。
 
それが「親子心」。
 
親がしてあげられることなんて、その程度のことでしかないのですから。
 
Brain with Soul代表
生きづらさ専門カウンセラー
しのぶ かつのり(信夫克紀)
 


アダルトチルドレンを「本気」で克服する方法 <目次>

1.アダルトチルドレンを「本気」で克服する方法
2.なぜ克服したはずの問題をくり返してしまうのか?
3.今までのアダルトチルドレン克服法が取りこぼしてきた盲点とは?
4.扁桃体が敏感だと自覚する
5.「あなたは強い」という事実
6.親を捨てる
7.アダルトチルドレン克服に欠かせない必要なこと
8.恩着せがましい親
9.一生懸命育てたのに!
10.あなたは本当に親不孝者なのか?
11.親にすべてをブチまけようと思う
12.親が子育ての非を認められない理由
13.親への仕返しが止められない
14.アダルトチルドレン克服の優先順位
15.親との対決に必要な覚悟
16.好きなこと、やりたいことがわからない
17.誰もわかってくれない
18.燃え尽き症候群をくり返してしまう
19.親子関係を良好にしたい
20.「してあげた」という親心
21.リラックスできない
22.体を整える
23.つき合う人を変える
24.ナイーブさを捨てる
25.人に批判されるのが怖い
26.自尊心が低い
27.アダルトチルドレンの「克服」とは?
28.感情をうまく表現できない
29.鬼のような親
30.人からの評価が気になる
31.自信よりも必要なもの
32.嘘をついてしまう
 
<次回更新予定 2018年5月30日(水)>
 

 
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