AIと張り合うくらいなら
生きづらい人生の歩き方
第25回
AIと張り合うくらいなら
現在さまざまな場面で、人間の代わりにAIが活躍しています。
人間に「勝つ」AIもいる。
以前「AI時代に生き残る仕事」でもご紹介したとおり、私たちの職業もAIに取って代わられるようになっています。
この先も私たちは、AIに居場所を奪われつづけていくのでしょうか?
きたるべきAI社会を分析した「AIの衝撃 - 人工知能は人類の敵か」(講談社)の中で、著者の小林雅一さんが、こんな未来のワンシーンを予測されています。
--------------------
あるとき、農作業の合間に将棋をしている人たちのところにAIロボットが訪れて、こう尋ねます。
「あなたたちはなぜ、そんな時代遅れの、つまらないゲームをして遊んでいるのですか?」
私たちの遠い子孫は、このロボットに向かって次のように答えるでしょう。
「そうかもしれないね。でも君たちは、そんな頭の悪い我々が生み出したものなんだよ。」
--------------------
未来の人間とAIのやりとりですね。
つまり人間は知能の面でAIと張り合うのをやめて、「人間らしさ」を楽しみながらAIと共存しているということでしょう。
もしかしたら、本当にこのようなのんびりした未来がくるのかもしれません。
ただ、少なくともしばらくのあいだは、人間とAIの「知能の競争」はつづくはずです。
そして「AIの人間化」が進んでいくでしょう。
やがてAIが一定の性能に達したとき、私はごく近い将来、
「誰々のAI」
というものが流行る時代がくると考えています。
たとえば「ニーチェのAI」とか「ブッダのAI」など、まずは過去の賢人の頭の中を疑似的に再現して、私たちにアドバイスを与えるエンターテイメントが話題になるかもしれません。
しだいに、それは存命中の著名人へと広がっていき、著作などで自分の考えを多く言葉に残している人の「悩み解決AI」がつくられて、スマホで簡単に相談できるようになるかもしれません。
ここまでお読みになったあなたは、
「おお、それは面白そうだ。使ってみよう。」
「誰のAIができたらいいかなぁ。」
と思われたかもしれません。
でも、ここで一つあなたにご提案したいことがあります。
それは、「誰々のAI」を使う側ではなく「誰々のAI」になる側をイメージしてみるということ。
つまり、
「自分のAI」
が作られるような人生を送るということです。
著名人のAIがあるていど流行ったら、きっと「身近な人のAI」を作るブームがくるでしょう。
そのための状況も整ってくるはずです。
死にあたっても遺言書だけではなく、遺族がさみしがらないように「自分のAI」を残すサービスも生まれるのではないでしょうか。
じっさいに現在、3Dプリンターの発展で、故人の3Dフィギュアを残すビジネスの利用者が増えているそうです。
お墓の前にいきスマホをかざすと、当人のメッセージつき映像がお墓の前に現れるというサービスもあるそうです。
きっと近い将来には、「死後に何かあったら相談してくれ」と自分のAIを家族に残そうとするニーズ、残して欲しいと願う遺族のニーズも増えてくるでしょう。
そんな時代が、あなたの生きているあいだに訪れたとき。
いろいろな人のAIに頼ってばかりの生き方と、「あなたのAIをつくりたい」と言われる生き方とでは、人生の濃密さが違うのではないでしょうか。
それは、誰かのために生きるというキレイごとでもなく、自分の名前を後世に残したいという自己顕示でもない。
もっと単純なこと。
あなたの「実存」が活かされ、充たされているということ。
つまり「ジツ充」です。
もしあなたが生きづらさを抱えておられるのなら。
きっと毎日毎日悩みつづけてきたはずです。
そしていろいろな気づきを得て、人生の苦難を乗り越えてきたことでしょう。
それは「AIになりやすい人生」だとは言えないでしょうか?
あなたは、あなたが思っている以上に、大きな財産を心の中に持っています。
それを整理し、言葉として形にしていくことは、とても有意義な営みです。
「誰々のAI」づくりが身近なサービスになったら、自分の情報のインプットは、
「では、この1,000個の質問にチェックしてください」
といった、なんだか味気ない方法になるかもしれません。
でもあなたの生きた言葉が手元にあれば、それをインプットすることで、「あなたのAI」はきっと他の人のAIよりもリアルで切実な力を持ったものになるでしょう。
カウンセリングの現場でも、じっさいにご自身の考えを整理し、言葉にするためにセッションを受けているという方が、たいへん多くおられます。
カウンセラーとの対話をとおして、自分を見つめ、自分がどんな思考をしているのか、外側に取り出して形にしていくのです。
それは、日常では味わえないとても濃密な時間です。
現代は、AIに自分の居場所が奪われるのではないかと、なにかと恐れをあおられる時代です。
しかし、AIと張り合うくらいなら、自分のAIをつくってしまおうという遊び心があるくらいの方が、これからの時代を豊かで柔軟に生きていくことができるのかもしれません。
Brain with Soul代表
生きづらさ専門カウンセラー
信夫克紀(しのぶ かつのり)
生きづらい人生の歩き方 <目次>
1.生きづらい人がAI時代に生き残れる仕事とは?
2.「世界一即戦力な男」に見る引きこもり脱出の糸口
3.生きづらい人向け「ビジネスの成功法則」
4.あなたは「善人」ですか「悪人」ですか?
5.お金は好きですか?-生きづらい人が陥るお金のジレンマ
6.「お金もうけ」にとらわれなくなる話
7.生きづらい人は「リア充」より「ジツ充」を目指そう
8.我慢してるのに自分勝手と言われる
9.生きづらさの正体
10.死んでも世界はつづくのか?
11.実存を充実させる生き方
12.他人の目が気になる人へ
13.「ジツ充」の極め方
14.不安の上手な対処法
15.変えられること、変えられないこと
16.「変えられること」の見つけ方
17.感情に飲み込まれない方法
18.自分と同じ症状の人が見当たらない
19.人生を変える方法
20.人生が変わる瞬間に必ず起こる問題
21.「心の空間」を生きる
22.話が噛み合わないと感じるなら
23.人生に疲れ果てたとき
24.「自分らしさ」とは何か?
25.AIと張り合うくらいなら
26.ジツ充とジコチュウの違い
27.社会に絶望している人へ
28.ネガティブ思考を変える適切な方法
29.生きづらい人は仕事を「三つ」もとう
30.心の健康法の効果が出ない理由
31.ベーシックインカムで将来も安心?
32.「悩み解決書」で悩みが解決しない理由
33.生きづらさを癒す一つの方法
34.もっとクヨクヨ考えよう
35.仕事を三つもつ理由
36.好きなことを仕事にする…?
37.苦しみの活かし方
38.向かい風を追い風にする生き方
39.行動力を身につける方法
40.お金との上手なつき合い方
41.自己洗脳と自己欺瞞
42.人並みという幻想
43.元気がないと幸せになれないのか?
44.「社会の常識」に振りまわされない
45.気が休まらない…
46.綺麗事に気づいてしまう人
47.生きづらい人が起業を成功させられる理由
48.そんなかんたんな話じゃない
49.人に気をつかい過ぎて疲れしまう
50.悩み過ぎて体がガチガチ
51.正解なんてない
52.心に余裕がない
53.誰に相談したらいいのかわからない
54.やる気はどこから湧いてくる?
55.人と対立してしまう
56.許すか、許さないか
57.生き方を決める
58.好きなこと探しの迷宮
59.生きづらさは誰のせい?
60.集中しすぎてしまう
61.家にも世の中にも居場所がないときの解決法
62.不用意に交友関係を増やそうとしない
63.自分を最強の味方にする方法
64.世間のしがらみから脱け出したい
65.あと一歩が踏み出せない
66.なぜメンタルが弱いのだろう…?
67.生きづらい人が「苦手」を克服する方法
68.心配ごとが頭から離れない
69.認められたいのに認めてもらえない
70.引きこもりは「悪いこと」なのか?
71.楽に生きたい
72.失言が多いので減らしたい
73.誰も心配してくれない
74.お金の上手な使い方
75.やる気が出ないのはなぜなのか?
76.深く悩んでいる人の方が「えらい」のか?
77.生きづらい人が幸せになりたいなら
78.この人と結婚していいのか?
79.心が敏感な人向けの対処法から抜け落ちている視点
80.人生を変えられる人と、変えられない人の違い
81.親が嫌いな自分はおかしいのか?
82.著名人と自分を比べてしまう
83.自分を信じられない
84.上司や部下に言うことを聞いてもらえない
85.劣等感は克服も解消もしなくていい
86.ポジティブシンキングがうまくできない
87.結果だけで判断される社会
88.「自分がされたら嫌ことは他人にしてはいけない」の嘘
89.「性格が悪い」と言われてしまう
90.「ありのままの自分」というやっかいな問題
91.「お金」以外に8つの基準をもとう
92.どうしてこんなにつらいのに誰にも伝わらないのだろう?
93.仕事が恐い、職場が恐い - その恐怖の正体と解決策
94.「恩知らずな人」を許せない
95.他人を不愉快にさせてしまう
96.「等身大の自分」という言葉にひそむ罠
97.有効な「貯金」の仕方を身に着けよう
98.「なぜ怒っているのかわからない」と言われてしまう
99.頑張っているのに結果が出ない・・・
100.自分を「弱い」と感じている人へ
101.集団になじめないなら「思いどおり」にやろう
102.無駄に苦しんできただけだった
103.お金の不安をなくす方法
104.私の「すべて」をわかってもらいたい - わかってもらいたい症候群
105.なぜ苦しみを「克服」できないのか?
106.生きづらいなら「心地よい人生」を目指そう
107.生きづらい人は「扁桃体をいたわる生き方」を身に着けよう!
108.生きづらい人が自由になれる「メタ思考」とは?
109.世間との「ほどよい距離」の取り方とは?
110.たんたんと生きる
111.生きづらい人が目標を達成できない本当の理由
112.三理一体の法則がうまくいかない人の共通点とは?
113.カタルシスが生きづらさ脱出の「起爆剤」になる理由
114.「生きづらさ克服」の気力を失いそうなあなたへ
115.「仕事に行きたくない、家にいたい」当事者の声と具体的な対処法
116. 気が弱い人が人生を変える極意
117.消えない恨みへの「レベル別」対処法
118.生きづらさをこじらせる「完全な被害者バイアス」とは?
119.生きづらいなら「役割」を果たし人生を落ち着かせよう
120.生きづらい人にもっとも大切な支援
121.生きづらい人は「意志が弱い」のか?
122.自分軸よりも大切なもの -「実存軸」で生きよう
123.人の言葉に傷つきやすい人が知ると楽になる二つの事実
124.メタ思考力を鍛えたいなら「バカ」や「アホ」ともつき合おう
125.生きづらさの「原因」を安易に特定するネット記事が多すぎる
126.「誰でもHSP症候群」にかかった日本
127.「結論だけ欲しがる社会」に踊れされるな
128.生きづらい人は「ギバー」を目指さなくていい
129.「一人で生きていく」と決めた生きづらい人に必要な覚悟
130.マイノリティは、なぜ生きづらいのか?
131.生きづらい人の「意識」の上手な活かし方
132.もんもん耐性、それは自分の「本質」と向き合える力
133.生きづらい人はAIと仲良くなれる - 関係性のシンギュラリティ
134.「メンタルが強い人」のアドバイスを真に受けない
135.雑談力は必要か?雑談できないあなたへ
136.嫉妬しやすい人が「嫉妬しない人」になりたいなら
137.お金に振り回されなくなる「二つの力」
138.日本社会で生きづらい人が苦しんでいる本当の理由
139.自分は本当に「生きづらい」のだろうか?
140.生きづらい人はコミュニケーションが得意という事実
141.内にこもりたいとき、あなたはどうしていますか?
142.「憧れの人」を目指すな - ビジネスの成功者に憧れる生きづらい人へ
143.私には不満がない
144.「無駄にプライドが高い人」が好きだ
145.その他大勢になるな、唯一無二のままであれ。
146.「生きる意味」が見つからない、生きづらい人へ
147.「異物」として生きて
148.FIRE達成!で、どうするの?
149.「気にしている」のではなく「気になっている」のです
150.「自分の本質」を見えなくさせるもの
151.生きづらい人が死ぬときに後悔しない方法
152.生きづらい人のための「お金を使う優先順位」
153.「傷の舐め合いはよくない」は本当か?
154.自己憐憫のススメ
おかげ様でコラム数500本突破!