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引きこもりは「悪いこと」なのか?

 

引きこもりは悪いことなのか?

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生きづらい人生の歩き方

 

第70回
引きこもりは「悪いこと」なのか?

 

┃引きこもりを攻撃する人たち

 
日本の社会では、「引きこもり」というと、あまりいいイメージをもたれませんよね。
 
でも、引きこもりと一言にいっても、じつはありとあらゆるパターンの引きこもりがあります。
 
カウンセリングの現場でも、引きこもりの方やその周囲の方たちと語り合う機会がたいへん多くあります。
 
引きこもっている本人の立場や年齢、衣食住を確保している方法まで本当にさまざまです。
 
にもかかわらず、世の中には「引きこもり=悪いこと」とひとくくりにして考えてしまう傾向があります。
 
じっさいに、はばかることなく引きこもりの人たちを攻撃する人もいます。
 
そのような人に詳しく話を聴いてみると、明確な経験やデータにもとづいて意見を述べている人はほとんどいません。
 
たんなるイメージで言っているに過ぎない。
 
なかにはもっともらしく「社会の生産性が下がる」などと言う人もいますが、やはりそれがどのような経緯によってどれくらい経済に打撃を与るのかを知る人はいません。
 
ましてや、今、日本の生産性をあげるとしたら、なんの生産性をあげればいいのかまで答えられる人もいません。
 
そして、これ以上生産性上げることが我が国にとって本当にいいことなのかという根本問題を検討した人など皆無です。
 
突き詰めていけば、この社会は本当に維持しなければならないほど健全で素晴らしい社会なのか。
 
そんな当たり前の疑問すらもたずに、「引きこもり=社会のお荷物」と言わんばかりに決めつけて意見をする人が本当に多いのです。
 
そのような人の話を集約してみると、結局最後は「俺は働いているのに、お前らは引きこもっているなんてずるいぞ!」と言っているに過ぎません。
 
隣の家の子が買ってもらったオモチャをうらやんでいる幼児と大差はないのです。
 
社会がこのような稚拙なまなざしで満たされているために、「引きこもり=悪いこと」という価値観で世間が統一されてしまっている。
 
その結果、不登校や出社拒否の人をみると、周囲の人は無条件に「とにかく学校に行かせなくては」「とにかく会社に戻させなくては」と本人をけしかけてしまう。
 
本人がなぜ不登校になり、出社拒否となって引きこもりたいのかという肝心な部分を置き去りにしてしまうのです。
 
 

┃引きこもりを「悪用すること」がよくない

 
とはいえ、引きこもっているすべての人が、たった一人で迷惑をかけずに暮らしているとはかぎりません。
 
家族に経済的、心理的な実害をもたらし、そのことを楽しんでいる人もいます。
 
また、引きこもれる環境にあぐらをかいて、その幸運に感謝することもなく、ただただ文句を垂れ流して生きている人もいます。
 
反対に、引きこもっているなかで自分と向き合うことに時間を費やし、人生を大きく飛躍させる人もいる。
 
そして、自分に与えられた時間を学びや成長のために活かす人もいます。
 
つまり、引きこもりという「状態」自体が、悪いのではない。
 
引きこもりを「悪用すること」がよくないのです。
 
引きこもるということは、現代社会と自分とのあいだに大きな溝があることを認めるということです。
 
それは、本人の本質があらわになった状態。
 
自分自身の核となるものの成長が生んだ自然な現象です。
 
これを一方的に「悪」と決めつけてしまうことが、本人にとってどれほど危険なことか、日本社会ではほとんど認識されていません。
 
学校に行くことが「当たり前」で、組織に就職することが「当たり前」。
 
その「当たり前」のことができない自分はおかしいのではないか?
 
そんなふうに自分を責めてしまい、せっかくあらわになってきた自分の本質を否定してしまっている人がおおぜいいる。
 
そして「なんとか学校に行かなくては」「なんとか組織に就職しなくては」と自分自身をけしかけて苦しんでいる。
 
「普通」や「社会の常識」に追い立てられて、夜も眠れない日々を送っているのです。
 
しかし、「普通」や「社会の常識」などというものは幻想にすぎません。
 
無条件になんの検討もせず、必ず合わせなければならないものではないのです。
 
(参照:「社会の常識に振り回されない」「人並みという幻想」)
 
にもかかわらず、「普通」や「社会の常識」に合わせられない人間は落ちこぼれであるという価値観が、日本社会に住むわれわれのなかに深く根づいています。
 
引きこもりの人も、周囲の人も、その価値観に振り回されている。
 
あまりにもかたよったその価値観によって、お互いに溝を深め合っているのです。
 
 

┃引きこもりになる勇気がありますか?

 
くり返しますが、引きこもり自体に、いいも悪いもありません。
 
たんなる「生き方」の選択肢のひとつに過ぎない。
 
それを無理に「引きこもるな!」という人がいるのであれば、こんなふうにたずねてみるといいでしょう。
 
「あなたは、引きこもりになる勇気がありますか?」
 
なりたくもないというのは答えになっていません。
 
引きこもりというのは、なりたくてなれるほど甘い生き方ではありません。
 
私自身、30代中盤を過ぎてから長年にわたり引きこもり生活を経験したので、身に染みて感じています。
 
ボロボロの心身で、三ヶ月先の見通しもないまま、社会から奇異のまなざしで見られ、それでも生きていく。
 
ただし、もしそれを自覚的かつ信念をもって選び取るなら。
 
それはまぎれもなく「挑戦」となるでしょう。
 
学校に行かずとも、通信教育やフリースクールなど、独自の方法で学問を身につける。
 
勉強に興味がわかないなら、なにかひとつでも自分のなかで今後生きていく糧となる技術を身につける。
 
組織に勤めずとも稼げるだけの脱世間起業力を身につける。
 
収入が得られなくても、生活保護やNPO団体の支援を受けながら、心と体の調子を取り戻し、社会のなかで生き抜く力を取り戻す。
 
毎日はつづかなくても、せっかく与えられた時間を使って、自分のペースでみずからを成長させていく。
 
それは落ちこぼれでもなんでもなく「本人に合った生き方」に過ぎません。
 
引きこもりになったからといって、学校に行けるようにする、組織に勤められるようにすることしか選択肢がないわけではない。
 
引きこもったまま生きていくという選択肢もあるのです。
 
自分に与えられた「引きこもり」という状況を活かし、自分の生き方を本気で探求し、見出していく。
 
それこそが「意味のある引きこもり」なのではないでしょうか。

 

Brain with Soul代表
生きづらさ専門カウンセラー
しのぶかつのり(信夫克紀)
 

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生きづらい人生の歩き方 <目次>

1.生きづらい人がAI時代に生き残れる仕事とは?
2.「世界一即戦力な男」に見る引きこもり脱出の糸口
3.生きづらい人向け「ビジネスの成功法則」
4.あなたは「善人」ですか「悪人」ですか?
5.お金は好きですか?-生きづらい人が陥るお金のジレンマ
6.「お金もうけ」にとらわれなくなる話
7.生きづらい人は「リア充」より「ジツ充」を目指そう
8.我慢してるのに自分勝手と言われる
9.生きづらさの正体
10.死んでも世界はつづくのか?
11.実存を充実させる生き方
12.他人の目が気になる人へ
13.「ジツ充」の極め方
14.不安の上手な対処法
15.変えられること、変えられないこと
16.「変えられること」の見つけ方
17.感情に飲み込まれない方法
18.自分と同じ症状の人が見当たらない
19.人生を変える方法
20.人生が変わる瞬間に必ず起こる問題
21.「心の空間」を生きる
22.話が噛み合わないと感じるなら
23.人生に疲れ果てたとき
24.「自分らしさ」とは何か?
25.AIと張り合うくらいなら
26.ジツ充とジコチュウの違い
27.社会に絶望している人へ
28.ネガティブ思考を変える適切な方法
29.生きづらい人は仕事を「三つ」もとう
30.心の健康法の効果が出ない理由
31.ベーシックインカムで将来も安心?
32.「悩み解決書」で悩みが解決しない理由
33.生きづらさを癒す一つの方法
34.もっとクヨクヨ考えよう
35.仕事を三つもつ理由
36.好きなことを仕事にする…?
37.苦しみの活かし方
38.向かい風を追い風にする生き方
39.行動力を身につける方法
40.お金との上手なつき合い方
41.自己洗脳と自己欺瞞
42.人並みという幻想
43.元気がないと幸せになれないのか?
44.「社会の常識」に振りまわされない
45.気が休まらない…
46.綺麗事に気づいてしまう人
47.生きづらい人が起業を成功させられる理由
48.そんなかんたんな話じゃない
49.人に気をつかい過ぎて疲れしまう
50.悩み過ぎて体がガチガチ
51.正解なんてない
52.心に余裕がない
53.誰に相談したらいいのかわからない
54.やる気はどこから湧いてくる?
55.人と対立してしまう
56.許すか、許さないか
57.生き方を決める
58.好きなこと探しの迷宮
59.生きづらさは誰のせい?
60.集中しすぎてしまう
61.家にも世の中にも居場所がないときの解決法
62.不用意に交友関係を増やそうとしない
63.自分を最強の味方にする方法
64.世間のしがらみから脱け出したい
65.あと一歩が踏み出せない
66.なぜメンタルが弱いのだろう…?
67.生きづらい人が「苦手」を克服する方法
68.心配ごとが頭から離れない
69.認められたいのに認めてもらえない
70.引きこもりは「悪いこと」なのか?
71.楽に生きたい
72.失言が多いので減らしたい
73.誰も心配してくれない
74.お金の上手な使い方
75.やる気が出ないのはなぜなのか?
76.深く悩んでいる人の方が「えらい」のか?
77.生きづらい人が幸せになりたいなら
78.この人と結婚していいのか?
79.心が敏感な人向けの対処法から抜け落ちている視点
80.人生を変えられる人と、変えられない人の違い
81.親が嫌いな自分はおかしいのか?
82.著名人と自分を比べてしまう
83.自分を信じられない
84.上司や部下に言うことを聞いてもらえない
85.劣等感は克服も解消もしなくていい
86.ポジティブシンキングがうまくできない
87.結果だけで判断される社会
88.「自分がされたら嫌ことは他人にしてはいけない」の嘘
89.「性格が悪い」と言われてしまう
90.「ありのままの自分」というやっかいな問題
91.「お金」以外に8つの基準をもとう
92.どうしてこんなにつらいのに誰にも伝わらないのだろう?
93.仕事が恐い、職場が恐い - その恐怖の正体と解決策
94.「恩知らずな人」を許せない
95.他人を不愉快にさせてしまう
96.「等身大の自分」という言葉にひそむ罠
97.有効な「貯金」の仕方を身に着けよう
98.「なぜ怒っているのかわからない」と言われてしまう
99.頑張っているのに結果が出ない・・・
100.自分を「弱い」と感じている人へ
101.集団になじめないなら「思いどおり」にやろう
102.無駄に苦しんできただけだった
103.お金の不安をなくす方法
104.私の「すべて」をわかってもらいたい - わかってもらいたい症候群
105.なぜ苦しみを「克服」できないのか?
106.生きづらいなら「心地よい人生」を目指そう
107.生きづらい人は「扁桃体をいたわる生き方」を身に着けよう!
108.生きづらい人が自由になれる「メタ思考」とは?
109.世間との「ほどよい距離」の取り方とは?
110.たんたんと生きる
111.生きづらい人が目標を達成できない本当の理由
112.三理一体の法則がうまくいかない人の共通点とは?
113.カタルシスが生きづらさ脱出の「起爆剤」になる理由
114.「生きづらさ克服」の気力を失いそうなあなたへ
115.「仕事に行きたくない、家にいたい」当事者の声と具体的な対処法
116. 気が弱い人が人生を変える極意
117.消えない恨みへの「レベル別」対処法
118.生きづらさをこじらせる「完全な被害者バイアス」とは?
119.生きづらいなら「役割」を果たし人生を落ち着かせよう
120.生きづらい人にもっとも大切な支援
121.生きづらい人は「意志が弱い」のか?
122.自分軸よりも大切なもの -「実存軸」で生きよう
123.人の言葉に傷つきやすい人が知ると楽になる二つの事実
124.メタ思考力を鍛えたいなら「バカ」や「アホ」ともつき合おう
125.生きづらさの「原因」を安易に特定するネット記事が多すぎる
126.「誰でもHSP症候群」にかかった日本
127.「結論だけ欲しがる社会」に踊れされるな
128.生きづらい人は「ギバー」を目指さなくていい
129.「一人で生きていく」と決めた生きづらい人に必要な覚悟
130.マイノリティは、なぜ生きづらいのか?
131.生きづらい人の「意識」の上手な活かし方
132.もんもん耐性、それは自分の「本質」と向き合える力
133.生きづらい人はAIと仲良くなれる - 関係性のシンギュラリティ
134.「メンタルが強い人」のアドバイスを真に受けない
135.雑談力は必要か?雑談できないあなたへ
136.嫉妬しやすい人が「嫉妬しない人」になりたいなら
137.お金に振り回されなくなる「二つの力」
138.日本社会で生きづらい人が苦しんでいる本当の理由
139.自分は本当に「生きづらい」のだろうか?
140.生きづらい人はコミュニケーションが得意という事実
141.内にこもりたいとき、あなたはどうしていますか?
142.「憧れの人」を目指すな - ビジネスの成功者に憧れる生きづらい人へ
143.私には不満がない
144.「無駄にプライドが高い人」が好きだ
145.その他大勢になるな、唯一無二のままであれ。
146.「生きる意味」が見つからない、生きづらい人へ
147.「異物」として生きて
148.FIRE達成!で、どうするの? 
149.「気にしている」のではなく「気になっている」のです 
150.「自分の本質」を見えなくさせるもの
151.生きづらい人が死ぬときに後悔しない方法
152.生きづらい人のための「お金を使う優先順位」
153.「傷の舐め合いはよくない」は本当か?
 


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