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そんなかんたんな話じゃない

 

生きづらい人生の歩き方第48回 そんなかんたんな話じゃない

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生きづらい人生の歩き方

 

第48回
そんなかんたんな話じゃない

 
あなたは、子供の頃にこんなご経験をしたことがありませんか?
 
洗い物を手伝っていたとき、お皿を割ってしまった。
 
「あー!なにやってるの!」
 
と大人から怒られる。
 
そこであなたは、自分が本当に思っている理由を述べる。
 
「お皿を持ったときの感覚がツルツルして、手のひらに触っていない感じで不思議で。だからどこまでお皿から手を離しても落ちないのかなって試してて…」
 
しかし、あなたの言葉は途中でさえぎられ、大人からこう言われるのです。
 
「嘘おっしゃい!」
 
「そんなわけないでしょ!」
 
「どうしてそんな面倒な言い訳をするんだ!」
 
嘘いつわりなく、本当の理由を述べたのに、一方的に嘘だと言われ、言い訳だと決めつけられる。
 
そして、
 
「いやいや手伝っていたってことでしょ?」
 
「真面目にやってなかっただけでしょ?」
 
と一言で言いなおされてしまう。
 
それを聴いてあなたは心のなかで思うのです。
 
<そんなかんたんな話じゃない…!>
 
と、くちびるを噛みしめながら。
 
もし似たようなご経験をおもちなら、あなたは「心の空間の住人」かも知れません。
 
心の空間の住人」は、日常生活の当たり前の行動のなかで、瞬間瞬間にさまざまなことを感じています。
 
だからこそ生きるのがたいへんで、ときには生きづらささえ感じてしまいます。
 
しかし、目の前の出来事を中心に生きている「物質空間の住人」には、そのことがまったく理解できません。
 
だから、あなたが本当に感じていたことをせきららに語っても、
 
「そんなわけないだろ」
 
「つまり、こういうことでしょ?」
 
と、自分たちの感性に合わせて「かんたんな話」に言いなおしてしまうのです。
 
自分の感じていることを、感じたことのない人に説明するのは、とてもたいへんなことです。
 
ましてや子供の頃であれば、そのことを大人に説明するのは本当に難しい。
 
さらに、お互いのあいだには「違う空間に住んでいる」という差があることまでふくめて説明しなければなりません。
 
子供の立場でそれを大人に納得してもらうのは、絶望的だと言えるでしょう。
 
そのために、苦しい少年少女時代を過ごした方も少なくありません。
 
たとえば、カウンセリングでお話をうかがっていると、次のようなケースがよくあります。
 
中学生の女の子Aさんが、自分が仲良くしていた女子のグループから仲間はずれにされてしまった。
 
そのグループの中心にいる女の子は、クラスでもボス格の女の子。
 
ボス格の子はそのグループだけではなく、他のグループにまで指示をして、ターゲットの子を決めては、嫌がらせをしたり無視することをくり返しています。
 
さらにクラスの班や部活など、彼女のいくところでは男子女子の区別なく、かならず同じようないじめがおこなわれるのです。
 
Aさんは、ついに自分の番が来たなと思いおとなしくしていましたが、いじめがおさまる気配はなく、ついに不登校をするようになりました。
 
両親に事情をたずねられ、Aさんは正直にボス格の子を中心に仲間はずれにされていることを打ち明けました。
 
さらに、多くの子がその被害に合っていると話しました。
 
ボス格の子を中心とした生徒たちのあいだに漂う「異様な空気」を、言葉を尽くして説明したのです。
 
それにたいして、両親はこう言いました。
 
「どうしてそんなに面倒くさく考えるの?」
 
「お前の考え過ぎだよ」
 
そして、ついにはこう言われてしまったのです。
 
「一度はっきり文句を言えば、そういう子は引き下がるものよ」
 
「あの子の兄貴は不良グループにいるから、その仕返しが怖くてみんな文句が言えないだけだよ」
 
それを聞いたAさんは、思うのです。
 
<そんなかんたんな話じゃない…!>
 
Aさんは、感じています。
 
ボス格の子から漂ってくる、なんとも言えない強い自己肯定感。
 
それがあるかぎり、反抗すればいくらでもやり返してきそうな圧迫感。
 
その雰囲気を本人も自覚したうえで利用している、人に有無を言わせない威圧感。
 
にもかかわらずもしボス格の子を追い落としてしまったら、学年全体が共有する世界像が一気に崩壊してしまうような危機感。
 
ボス格の子が放つ、それほどまでの存在感。
 
このすべてが、「そうやすやすと反抗できない空気」を生み出している。
 
その空気が、教師も含めた学年中に充満して日常と化している。
 
Aさんが、これらのことをどれだけ説明しても、両親は、
 
「要するに、本当は仕返しが怖いだけでしょ?」
 
「結局、先のことを考え過ぎちゃうってことしょ?」
 
「つまり、みんな見て見ぬふりってことでしょ?」
 
と『かんたんな話』にしてしまう。
 
先生に説明しても、やはり『かんたんな話」にされてしまう。
 
そして、考え過ぎだ、面倒くさい、嘘をつくな、言い訳するなと言われてしまうのです。
 
あげくに、「かんたんな解決策」を提示され、実行しろと迫られる。
 
それは対処療法にしかならないので、食い下がってもう一度説明をすると。
 
「もういい!」
 
とヒステリックに切り捨てられたり、
 
「わかった、わかった…」
 
とあきれられて話が完全に終わってしまうのです。
 
どうしてこのような食い違いが起きるのでしょうか?
 
それは「心の空間の住人」が、
 
「結果よりもプロセスを重視する」
 
という性質を持っているからです。
 
物質空間の住人」は、あまりプロセスにこだわりません。
 
結果が良ければそれでいいと、こだわらずに済ませることができます。
 
もちろんこれは「どちらの住人が正しい」という問題ではありません。
 
単純に、重要だと感じる点がまったく違っているということです。
 
心の空間の住人」は、ものごとの合間に充満している感情や雰囲気をとても敏感に察知しながら生きています。
 
というよりも、それが意識の中心を占めています。
 
つまり、目の前にあるものごとという「結果」よりも、どんな感情や雰囲気がそのものごとを起こさせているのかという「プロセス」に、自然と注意が向いてしまうのです。
 
言うなれば、「答え」よりも「式」を重視する。
 
「答え」をいきなり出されても、なぜそうなったのかという「式」に納得できないと、不全感を覚えてしまう。
 
心の空間の住人」にとっては、「式」の方こそが「現実」なのです。
 
もちろん、「心の空間の住人」と「物質空間の住人」が、明確に真っ二つに別れているわけではありません。
 
誰だって、「心の空間」と「物質空間」の両方の傾向を合わせもっています。
 
ただ生きづらさを感じている人は、「心の空間」にいる比率が圧倒的に高い。
 
カウンセリングをしていても、そのことを強く感じます。
 
だから、生きづらい人は「プロセス」を無理に人と共有しようとしない。
 
ましてや、理解してもらおうと思わない方がいいでしょう。
 
この人ならと思える人にだけ、そっと打ち明けてみる。
 
それ以外は、お互いにとって好ましい結果にはなりえません。
 
「答え」さえあればいいと思っている人に、いくら「式」の説明をしても、迷惑だと感じられてしまうだけなのです。
 
Brain with Soul代表
生きづらさ専門カウンセラー
しのぶかつのり(信夫克紀)
 

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生きづらい人生の歩き方 <目次>

1.生きづらい人がAI時代に生き残れる仕事とは?
2.「世界一即戦力な男」に見る引きこもり脱出の糸口
3.生きづらい人向け「ビジネスの成功法則」
4.あなたは「善人」ですか「悪人」ですか?
5.お金は好きですか?-生きづらい人が陥るお金のジレンマ
6.「お金もうけ」にとらわれなくなる話
7.生きづらい人は「リア充」より「ジツ充」を目指そう
8.我慢してるのに自分勝手と言われる
9.生きづらさの正体
10.死んでも世界はつづくのか?
11.実存を充実させる生き方
12.他人の目が気になる人へ
13.「ジツ充」の極め方
14.不安の上手な対処法
15.変えられること、変えられないこと
16.「変えられること」の見つけ方
17.感情に飲み込まれない方法
18.自分と同じ症状の人が見当たらない
19.人生を変える方法
20.人生が変わる瞬間に必ず起こる問題
21.「心の空間」を生きる
22.話が噛み合わないと感じるなら
23.人生に疲れ果てたとき
24.「自分らしさ」とは何か?
25.AIと張り合うくらいなら
26.ジツ充とジコチュウの違い
27.社会に絶望している人へ
28.ネガティブ思考を変える適切な方法
29.生きづらい人は仕事を「三つ」もとう
30.心の健康法の効果が出ない理由
31.ベーシックインカムで将来も安心?
32.「悩み解決書」で悩みが解決しない理由
33.生きづらさを癒す一つの方法
34.もっとクヨクヨ考えよう
35.仕事を三つもつ理由
36.好きなことを仕事にする…?
37.苦しみの活かし方
38.向かい風を追い風にする生き方
39.行動力を身につける方法
40.お金との上手なつき合い方
41.自己洗脳と自己欺瞞
42.人並みという幻想
43.元気がないと幸せになれないのか?
44.「社会の常識」に振りまわされない
45.気が休まらない…
46.綺麗事に気づいてしまう人
47.生きづらい人が起業を成功させられる理由
48.そんなかんたんな話じゃない
49.人に気をつかい過ぎて疲れしまう
50.悩み過ぎて体がガチガチ
51.正解なんてない
52.心に余裕がない
53.誰に相談したらいいのかわからない
54.やる気はどこから湧いてくる?
55.人と対立してしまう
56.許すか、許さないか
57.生き方を決める
58.好きなこと探しの迷宮
59.生きづらさは誰のせい?
60.集中しすぎてしまう
61.家にも世の中にも居場所がないときの解決法
62.不用意に交友関係を増やそうとしない
63.自分を最強の味方にする方法
64.世間のしがらみから脱け出したい
65.あと一歩が踏み出せない
66.なぜメンタルが弱いのだろう…?
67.生きづらい人が「苦手」を克服する方法
68.心配ごとが頭から離れない
69.認められたいのに認めてもらえない
70.引きこもりは「悪いこと」なのか?
71.楽に生きたい
72.失言が多いので減らしたい
73.誰も心配してくれない
74.お金の上手な使い方
75.やる気が出ないのはなぜなのか?
76.深く悩んでいる人の方が「えらい」のか?
77.生きづらい人が幸せになりたいなら
78.この人と結婚していいのか?
79.心が敏感な人向けの対処法から抜け落ちている視点
80.人生を変えられる人と、変えられない人の違い
81.親が嫌いな自分はおかしいのか?
82.著名人と自分を比べてしまう
83.自分を信じられない
84.上司や部下に言うことを聞いてもらえない
85.劣等感は克服も解消もしなくていい
86.ポジティブシンキングがうまくできない
87.結果だけで判断される社会
88.「自分がされたら嫌ことは他人にしてはいけない」の嘘
89.「性格が悪い」と言われてしまう
90.「ありのままの自分」というやっかいな問題
91.「お金」以外に8つの基準をもとう
92.どうしてこんなにつらいのに誰にも伝わらないのだろう?
93.仕事が恐い、職場が恐い - その恐怖の正体と解決策
94.「恩知らずな人」を許せない
95.他人を不愉快にさせてしまう
96.「等身大の自分」という言葉にひそむ罠
97.有効な「貯金」の仕方を身に着けよう
98.「なぜ怒っているのかわからない」と言われてしまう
99.頑張っているのに結果が出ない・・・
100.自分を「弱い」と感じている人へ
101.集団になじめないなら「思いどおり」にやろう
102.無駄に苦しんできただけだった
103.お金の不安をなくす方法
104.私の「すべて」をわかってもらいたい - わかってもらいたい症候群
105.なぜ苦しみを「克服」できないのか?
106.生きづらいなら「心地よい人生」を目指そう
107.生きづらい人は「扁桃体をいたわる生き方」を身に着けよう!
108.生きづらい人が自由になれる「メタ思考」とは?
109.世間との「ほどよい距離」の取り方とは?
110.たんたんと生きる
111.生きづらい人が目標を達成できない本当の理由
112.三理一体の法則がうまくいかない人の共通点とは?
113.カタルシスが生きづらさ脱出の「起爆剤」になる理由
114.「生きづらさ克服」の気力を失いそうなあなたへ
115.「仕事に行きたくない、家にいたい」当事者の声と具体的な対処法
116. 気が弱い人が人生を変える極意
117.消えない恨みへの「レベル別」対処法
118.生きづらさをこじらせる「完全な被害者バイアス」とは?
119.生きづらいなら「役割」を果たし人生を落ち着かせよう
120.生きづらい人にもっとも大切な支援
121.生きづらい人は「意志が弱い」のか?
122.自分軸よりも大切なもの -「実存軸」で生きよう
123.人の言葉に傷つきやすい人が知ると楽になる二つの事実
124.メタ思考力を鍛えたいなら「バカ」や「アホ」ともつき合おう
125.生きづらさの「原因」を安易に特定するネット記事が多すぎる
126.「誰でもHSP症候群」にかかった日本
127.「結論だけ欲しがる社会」に踊れされるな
128.生きづらい人は「ギバー」を目指さなくていい
129.「一人で生きていく」と決めた生きづらい人に必要な覚悟
130.マイノリティは、なぜ生きづらいのか?
131.生きづらい人の「意識」の上手な活かし方
132.もんもん耐性、それは自分の「本質」と向き合える力
133.生きづらい人はAIと仲良くなれる - 関係性のシンギュラリティ
134.「メンタルが強い人」のアドバイスを真に受けない
135.雑談力は必要か?雑談できないあなたへ
136.嫉妬しやすい人が「嫉妬しない人」になりたいなら
137.お金に振り回されなくなる「二つの力」
138.日本社会で生きづらい人が苦しんでいる本当の理由
139.自分は本当に「生きづらい」のだろうか?
140.生きづらい人はコミュニケーションが得意という事実
141.内にこもりたいとき、あなたはどうしていますか?
142.「憧れの人」を目指すな - ビジネスの成功者に憧れる生きづらい人へ
143.私には不満がない
144.「無駄にプライドが高い人」が好きだ
145.その他大勢になるな、唯一無二のままであれ。
146.「生きる意味」が見つからない、生きづらい人へ
147.「異物」として生きて
 


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