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更新日:2024年10月14日

自己憐憫のススメ

 

自己憐憫のススメ

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生きづらい人生の歩き方

 

第154回
自己憐憫のススメ

 

┃自己憐憫とは?じつは・・・


自己憐憫と聴いて、あなたはどう感じますか?

悲劇のヒロインに酔っている。

そんなことだけはするまい。

そんなイメージをもっておられるのではないでしょうか。

たしかに自己憐憫は、世間で毛嫌いされていますよね。

「みっともないマネ」の代表格とさえ言えるでしょう。

しかし・・・。

その勘違いが、じつは多くの生きづらい人を追い詰めています。

そう、勘違いなんです、自己憐憫が「みっともないマネ」だというのは。

自己憐憫は、じつは非常に勇敢な行為。

そして、生きづらい人がまず真っ先に取り組まなければならないこと。

決して奇をてらって言っているわけではありません。

これがシンプルに「事実」なんです。

ではなぜ、自己憐憫が勇敢で、ましてや真っ先に取り組まなければならないことなのか?

それを正確に理解していただくために、まずは「自己憐憫」に対する世間の勘違いから説明していきましょう。
 


┃自己憐憫について誰もがおちいる勘違い


まず、ここまで読んで、

「自己憐憫が勇敢?」

「しかも取り組むべきこと?」

「自己憐憫してる人を相手にするのがどれだけ大変か知ってるの?」

と感じる人もいるでしょう。

たしかに、自己憐憫している人への対処は、とても「やっかい」だと言われていますよね。

たとえば、やたらと自分の不幸を強調し、同情をかおうとする発言ばかりしてくる。

くり返し語られるのは、まるでその人のまわりには世界中から無理解で薄情な人だけが選ばれて配置されているかのような悲劇のストーリー。

それに対してその人の思うような反応をしないと、

「あなたはなにもわかっていない!」

と激しく非難してくる。

そして自分の責任は棚にあげて、周囲の人を責めるばかり。

これでは、かかわる人はみな疲れてしまい、「やっかい」だと感じてしまうのも無理はないでしょう。

だから自己憐憫はよくないという気もちもわかります。

でも、ちょっと待ってください。

本当にこの問題を「自己憐憫」という言葉で表現していいのでしょうか?

そうなんです。

ここを取り違えているから、世間では自己憐憫が毛嫌いされている。

じつは、このやっかいな問題を引き起こしているのは「自己憐憫」ではないのです。

ではいったいなんなのでしょうか?
 
いったいなにが、この問題を引き起こしているのでしょうか?

それは「被害者意識」です。

自分を被害者の位置に固定し、そこからしかものが見えなくなっている状態。

だから、自分は理解され、気づかわれ、あわれまれ、いたわられて当然の存在。

その「被害者意識」こそがやっかいなのであって、決して自己憐憫がやっかいなわけではないのです。

「自己憐憫」と「被害者意識」は別のものです。

この違いを混同しているために、本来必要である自己憐憫が世間では封じられているのです。
 


┃自己憐憫がどうしても必要な理由


自己憐憫は素晴らしいものです。

そもそも「憐憫」とは、相手を不憫だと思う哀れみの気もちです。

あわれみとは、人の苦しみや悲しみに深く同情することですよね。

同情は、その苦悩を自分のことのように親身になって共に感じ、思いやることに他なりません。

つまり憐憫とは「苦悩を親身に思いやる」ことです。

それを自分にしてあげることの、いったいなにが悪いというのでしょうか?

いえ・・・、
 
生きづらい人について言えば、自分に対して「苦悩を親身に思いやる」ことこそが、まず最初に取り組まなければならないことなのです。

なぜなら、そのステップををすっ飛ばして先に進んでも、苦しみのあまりどこかで燃え尽きてしまうから。

心が潰れてしまうからです。

生きづらい人は、たくさんの苦悩を抱えて生きています。

しかしその苦悩が、なかなか人からは理解されにくい。

どんなに苦しいと訴えても信じてもらえない。

苦悩に見向きもされない。

つまり、苦悩が「透明」で人からは見えないのです。

だから、自分もその苦悩を苦悩とは認めずに生きてきた。

「こんなことくらいで悩んではいけない」と、必死に前を向いて生きてきた。

これは苦悩ではなく甘えだと自分を叱咤して、日々をなんとか乗り越えてきた。

でもやがて、心も体も言うことをきかなくなった。

前を向くことも、自分を叱咤することもできなくなった。

だって、苦悩は確実にそこにあるから。

どんなに透明で人から見えなくても、やっぱりそこにちゃんとあるから。

だから・・・、

まずは自分で、その苦悩を認めてあげること。

その苦悩がいかに苦しいかを認めてあげること。

その苦しみを理解されずに生きてきたことが、どれほど苦しかったのかを認めてあげること。

「こんな苦しみを抱えて生きてきたんだね・・・」と、しっかりあわれんであげること。

「これじゃ苦しいよね、本当に本当に苦しかったね・・・」と、深く同情してあげること。

「これだけの苦悩を乗り越えて、よく今日まで生き抜いてきたね・・・」と、心の底から親身になって思いやってあげること。

その自己憐憫こそが、生きづらい人にはどうしても必要なのです。

それをせずに、苦悩を無視して前だけ見て進んでいても、無理がたたっていつか燃え尽きてしまう。

生きづらい自分に合わない生き方を選んで、やがて潰れてしまう。

だから自己憐憫は、生きづらさから脱け出すためのはじめの一歩。

自分が自分として生きられるように、なににおいても、まず取り組まなければならないことなのです。
 


┃「だから自己憐憫しよう」と言われても・・・


とはいえ・・・、

自己憐憫が必要と言われて、はいそうですかと取り組むことは難しいですよね。

自分で自分をあわれむなんて、なんだか気恥ずかしい。

自分に同情してあげるなんて、そこまで自分を甘やかしていいんだろうか。

人からもバカにされ、笑われてしまうんじゃないだろうか。

結局自分は、ただつらい現実から逃げているだけなんじゃないだろうか・・・と。

そんな思いが渦巻いて、なかなか自己憐憫に取り組もうという気になれないのではないでしょうか。

そうなんです。

だからこそ、自己憐憫は勇敢な行為なのです。

その高いハードルを乗り越えていくからこそ、勇敢さが求められるのです。

生半可な覚悟ではできない行為。

それが自己憐憫。

だから・・・、

自己憐憫しましょうと私が言っているのは、

「自己憐憫していいんだよ、あなたは悪くないんだよ」

と慰めているわけではなく、

「本気で自己憐憫しなきゃ、生きづらさから脱け出すなんてとてもじゃないけど無理だよ」

とケツを蹴っ飛ばしているのです。
 


┃自己憐憫とは「自分の強さ」に気づくこと


自己憐憫しなければ、生きづらさからは脱け出せない。

覚悟を決めて自己憐憫する。

そのためには、自分の苦悩と向き合わざるをえません。

それは、自分自身を深く知る自己探求の旅です。

自分がどんな苦悩を抱え、そのためにどれだけ苦しんできたのか。

決して単純ではない複雑に絡み合った葛藤を、ていねいに解きほぐしていく。

言葉にしていく。

ときには、決して触れてはならないような厚く重い扉を見つけて、これを今開けて本当にいいのかと慎重に判断せざるをえないときもある。

そうして、自分の透明な苦悩に、姿かたちを与えていくのです。

それは「自分の強さ」に気づくということでもあります。

誰からも気にかけられることのなかった透明な苦悩。

それを背負いつづけたきた自分が、いかにタフでしぶとかったのか。

これだけの苦しみを抱えているにもかかわらず、人生を投げ出さずに今日まで生きてきた自分が、いかに粘り強くしたたかだったのか。

その自分の「生命力」を目の当たりにするということです。

生きづらさとは決して弱さではない。

その苦しみを抱えながら生きてきた「強さの証明」であるということ。

その「事実」を受け入れる覚悟をもった人だけが、自己憐憫に取り組めるのです。

そのための場として、私は「 Adic Salon」を創りました。

生きづらい人が安心して、思う存分自己憐憫に取り組めるように。

だからAdic Salonには、被害者意識を肯定し合いかばい合う人はいません。

覚悟をもって自己憐憫に取り組む「勇者」がそろっているのです。

だから、いつだってAdic Salonには生命力が溢れ、躍動している。

前向きな言葉もなく、元気さも求められず、活発なコミュニケーションも必要とされていない。

ただそこには、生きづらい人生をたんたんと突破する者たちの、静かな「強さ」が息づいているのです。
 
Brain with Soul代表
生きづらさ専門カウンセラー
しのぶかつのり
 
 
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自分を「弱い」と感じている人へ
生きづらさをこじらせる「完全な被害者バイアス」とは?
 
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生きづらい人生の歩き方 <目次>

1.生きづらい人がAI時代に生き残れる仕事とは?
2.「世界一即戦力な男」に見る引きこもり脱出の糸口
3.生きづらい人向け「ビジネスの成功法則」
4.あなたは「善人」ですか「悪人」ですか?
5.お金は好きですか?-生きづらい人が陥るお金のジレンマ
6.「お金もうけ」にとらわれなくなる話
7.生きづらい人は「リア充」より「ジツ充」を目指そう
8.我慢してるのに自分勝手と言われる
9.生きづらさの正体
10.死んでも世界はつづくのか?
11.実存を充実させる生き方
12.他人の目が気になる人へ
13.「ジツ充」の極め方
14.不安の上手な対処法
15.変えられること、変えられないこと
16.「変えられること」の見つけ方
17.感情に飲み込まれない方法
18.自分と同じ症状の人が見当たらない
19.人生を変える方法
20.人生が変わる瞬間に必ず起こる問題
21.「心の空間」を生きる
22.話が噛み合わないと感じるなら
23.人生に疲れ果てたとき
24.「自分らしさ」とは何か?
25.AIと張り合うくらいなら
26.ジツ充とジコチュウの違い
27.社会に絶望している人へ
28.ネガティブ思考を変える適切な方法
29.生きづらい人は仕事を「三つ」もとう
30.心の健康法の効果が出ない理由
31.ベーシックインカムで将来も安心?
32.「悩み解決書」で悩みが解決しない理由
33.生きづらさを癒す一つの方法
34.もっとクヨクヨ考えよう
35.仕事を三つもつ理由
36.好きなことを仕事にする…?
37.苦しみの活かし方
38.向かい風を追い風にする生き方
39.行動力を身につける方法
40.お金との上手なつき合い方
41.自己洗脳と自己欺瞞
42.人並みという幻想
43.元気がないと幸せになれないのか?
44.「社会の常識」に振りまわされない
45.気が休まらない…
46.綺麗事に気づいてしまう人
47.生きづらい人が起業を成功させられる理由
48.そんなかんたんな話じゃない
49.人に気をつかい過ぎて疲れしまう
50.悩み過ぎて体がガチガチ
51.正解なんてない
52.心に余裕がない
53.誰に相談したらいいのかわからない
54.やる気はどこから湧いてくる?
55.人と対立してしまう
56.許すか、許さないか
57.生き方を決める
58.好きなこと探しの迷宮
59.生きづらさは誰のせい?
60.集中しすぎてしまう
61.家にも世の中にも居場所がないときの解決法
62.不用意に交友関係を増やそうとしない
63.自分を最強の味方にする方法
64.世間のしがらみから脱け出したい
65.あと一歩が踏み出せない
66.なぜメンタルが弱いのだろう…?
67.生きづらい人が「苦手」を克服する方法
68.心配ごとが頭から離れない
69.認められたいのに認めてもらえない
70.引きこもりは「悪いこと」なのか?
71.楽に生きたい
72.失言が多いので減らしたい
73.誰も心配してくれない
74.お金の上手な使い方
75.やる気が出ないのはなぜなのか?
76.深く悩んでいる人の方が「えらい」のか?
77.生きづらい人が幸せになりたいなら
78.この人と結婚していいのか?
79.心が敏感な人向けの対処法から抜け落ちている視点
80.人生を変えられる人と、変えられない人の違い
81.親が嫌いな自分はおかしいのか?
82.著名人と自分を比べてしまう
83.自分を信じられない
84.上司や部下に言うことを聞いてもらえない
85.劣等感は克服も解消もしなくていい
86.ポジティブシンキングがうまくできない
87.結果だけで判断される社会
88.「自分がされたら嫌ことは他人にしてはいけない」の嘘
89.「性格が悪い」と言われてしまう
90.「ありのままの自分」というやっかいな問題
91.「お金」以外に8つの基準をもとう
92.どうしてこんなにつらいのに誰にも伝わらないのだろう?
93.仕事が恐い、職場が恐い - その恐怖の正体と解決策
94.「恩知らずな人」を許せない
95.他人を不愉快にさせてしまう
96.「等身大の自分」という言葉にひそむ罠
97.有効な「貯金」の仕方を身に着けよう
98.「なぜ怒っているのかわからない」と言われてしまう
99.頑張っているのに結果が出ない・・・
100.自分を「弱い」と感じている人へ
101.集団になじめないなら「思いどおり」にやろう
102.無駄に苦しんできただけだった
103.お金の不安をなくす方法
104.私の「すべて」をわかってもらいたい - わかってもらいたい症候群
105.なぜ苦しみを「克服」できないのか?
106.生きづらいなら「心地よい人生」を目指そう
107.生きづらい人は「扁桃体をいたわる生き方」を身に着けよう!
108.生きづらい人が自由になれる「メタ思考」とは?
109.世間との「ほどよい距離」の取り方とは?
110.たんたんと生きる
111.生きづらい人が目標を達成できない本当の理由
112.三理一体の法則がうまくいかない人の共通点とは?
113.カタルシスが生きづらさ脱出の「起爆剤」になる理由
114.「生きづらさ克服」の気力を失いそうなあなたへ
115.「仕事に行きたくない、家にいたい」当事者の声と具体的な対処法
116. 気が弱い人が人生を変える極意
117.消えない恨みへの「レベル別」対処法
118.生きづらさをこじらせる「完全な被害者バイアス」とは?
119.生きづらいなら「役割」を果たし人生を落ち着かせよう
120.生きづらい人にもっとも大切な支援
121.生きづらい人は「意志が弱い」のか?
122.自分軸よりも大切なもの -「実存軸」で生きよう
123.人の言葉に傷つきやすい人が知ると楽になる二つの事実
124.メタ思考力を鍛えたいなら「バカ」や「アホ」ともつき合おう
125.生きづらさの「原因」を安易に特定するネット記事が多すぎる
126.「誰でもHSP症候群」にかかった日本
127.「結論だけ欲しがる社会」に踊れされるな
128.生きづらい人は「ギバー」を目指さなくていい
129.「一人で生きていく」と決めた生きづらい人に必要な覚悟
130.マイノリティは、なぜ生きづらいのか?
131.生きづらい人の「意識」の上手な活かし方
132.もんもん耐性、それは自分の「本質」と向き合える力
133.生きづらい人はAIと仲良くなれる - 関係性のシンギュラリティ
134.「メンタルが強い人」のアドバイスを真に受けない
135.雑談力は必要か?雑談できないあなたへ
136.嫉妬しやすい人が「嫉妬しない人」になりたいなら
137.お金に振り回されなくなる「二つの力」
138.日本社会で生きづらい人が苦しんでいる本当の理由
139.自分は本当に「生きづらい」のだろうか?
140.生きづらい人はコミュニケーションが得意という事実
141.内にこもりたいとき、あなたはどうしていますか?
142.「憧れの人」を目指すな - ビジネスの成功者に憧れる生きづらい人へ
143.私には不満がない
144.「無駄にプライドが高い人」が好きだ
145.その他大勢になるな、唯一無二のままであれ。
146.「生きる意味」が見つからない、生きづらい人へ
147.「異物」として生きて
148.FIRE達成!で、どうするの? 
149.「気にしている」のではなく「気になっている」のです 
150.「自分の本質」を見えなくさせるもの
151.生きづらい人が死ぬときに後悔しない方法
152.生きづらい人のための「お金を使う優先順位」
153.「傷の舐め合いはよくない」は本当か?
154.自己憐憫のススメ
 


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