正解なんてない

 

生きづらい人生の歩き方第51回 正解なんてない

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生きづらい人生の歩き方

 

第51回
正解なんてない

 
私たちは悩むとき苦しいとき、それを解決するための「正解」を求めますよね。
 
どこかに必ず答えがあるはずで、なんとしてもそれを手に入れたいと思う。
 
そこで来る日も来る日も、なにが「正解」なのかを考えつづけるのです。
 
それでも「正解」がわからないので、いろいろな人の話を参考にしたり、本を読んだり、ときにはセミナーを受けてみたりもします。
 
そして「ついに正解を見つけた!」と思い、その「正解」を実践してみます。
 
しかし、やがて行き詰まり、「やはりこれも正解ではなかった…」と悩み、苦しみつづける。
 
とくに、生きづらいと感じている人は、この「正解探しの旅」を長いあいだつづけてきたことでしょう。
 
あまりの旅の長さと過酷さに、疲れ果ててしまっている方も多いはずです。
 
もしかするとあなたも、そのなかのお一人かもしれません。
 
ではなぜ、あなたがそこまで過酷な旅をつづけているにもかかわらず、「正解」は見つからないのでしょうか。
 
いったいぜんたい「正解」はどこにあるというのでしょうか?
 
それは、すでにあなたも気づいておられるはず。
 
そう。
 
「正解なんてない」
 
ということに。
 
「正解」とは、ある一定のルールを決めたなかで正しいとされる仮の答えでしかありません。
 
そもそもこの世界に「正解」なんてないのです。
 
だから、いくら探しても、どこを探しても見つからないのです。
 
私たちは、子供の頃から教えられてきました。
 
「正解」がある、と。
 
親の教えや道徳、世間の常識など、これが正しいのだと「正解」を叩きこまれてきました。
 
小学校、中学校、高校の授業でも、まるでこの世界のことはすべて解明されているかのように「正解」を教えてられてきました。
 
しかし大学に行ってみると、じつはあらゆる異なった考え方や理論があり、今まで教わった「正解」はすべて「仮説」に過ぎなかったということを教えられます。
 
ちゃぶ台をひっくり返すとはこのことです。
 
「正解」なんてない。
 
そうハッキリと告げられるのです。
 
私は以前、小学校で放課後学習の指導員をさせていただいたことがあります。
 
そこである低学年の女の子が、次のような国語の問題を解いていました。
 
「おもたい」「かわいい」「子犬」「岩」、これらの言葉を正しく結びつけなさない。
 
女の子は次のように答えました。
 
「おもたい子犬」
「かわいい岩」
 
その解答用紙を見て、私はとまどいました。
 
決して間違っていないからです。
 
重たい子犬は、じっさいにこの世界には山ほどいます。
 
かわいい岩があるかどうかは、もはや主観です。
 
岩を見た本人がかわいいと思えば、かわいい岩になるでしょう。
 
そう考えると、重たいかどうかも最終的には主観で判断することになるでしょう。
 
このときをきっかけに、自分にこの仕事は向いていないと思い知らされ、私はその職を辞しました。
 
私たちが当たり前のように「正解」だと思っていることは、まったくあてになりません。
 
宇宙の果てはどうなっているのか、命とはなにか、人生とはなにか。
 
このような私たちの存在にかかわる重大で根源的な問題も、いまだに誰も「正解」がわからないのです。
 
もちろん、もしかしたら「正解」、つまり「真理」があるのかもしれません。
 
でも、それを私たちが言語を使って伝え合っているかぎり、その「正解」をまったく同じに意味で理解し合えているか確認のしようがありません。
 
「正解」があったとしても、共有できないのです。
 
つまり、人類に共通の「正解」なんてありえないということ。
 
にもかかわらず、どこかにあるはずだと「正解」を探し求めていたら。
 
ただでさえ苦しい悩みは、より苦しさを増していくでしょう。
 
つまり、生きづらい人が人生を歩いていくうえで重要になるのは、外側に「正解」を求めないということ。
 
そして自分のなかに、
 
「正解を創り上げていく」
 
ということになるのではないでしょうか。
 
では、どうすれば自分のなかに「正解」を創り上げていくことができるようになるのか?
 
なかなか難しい問題ですよね。
 
私がおすすめしているのは、
 
「読書」
 
です。
 
あれ?
 
でも読書をしたら、外側に「正解」を求めているような感じがしますよね。
 
だから「正解」を求めるために本を読むのではないのです。
 
この世界にはあらゆる違った意見が存在していて、「正解」なんてないということを思い知るために読書をするのです。
 
私はこれを、
 
「無正解読書法」
 
と呼んでいます。
 
たとえば、「人間の仕事が将来AIに奪われる」という考え方がありますよね。
 
ベストセラーにもなっている「10年後の仕事図鑑」(堀江貴文×落合陽一著/SB Creative刊)には、
 
「AIが単純労働を代替し、人間が好きなことだけやって生きられる」
 
「AIが人々の仕事を急速に奪い、社会を瞬く間に刷新していく事実を肌で感じてほしい。」
 
と書かれています。
 
しかし、同じくベストセラーとなった「未来の年表 人口減少日本でこれから起きること」(河合雅司著/講談社刊)には、
 
「(労働力不足を)AIで解決は夢物語」
 
「AIによって無くなる仕事といった特集記事もよく目にするが、AIには限界があると認識した方が適切だ。」
 
と書かれています。
 
どちらも広く受け入れられ、あらゆる分野で活躍されている著者ですが、まったく違う角度から「正解」を述べている。
 
重要なのは、このような異なる意見を取り入れながら「でも私はこう思う」という発想を養っていくことです。
 
さまざまな「正解」のはざまに立てば、自分にとってゆずれない思いがなんなのかが、やがてハッキリとわかってきます。
 
少しずつ自分がきわ立っていくのです。
 
だから同じ分野の本でも、一冊で済まさずに、何冊も読んでみる。
 
これはいいことが書いてあるなと思う本と出会えても、そのまま納得してしまわずに、あえてそれとは正反対のことを述べている本を探して読んでみる。
 
それをくり返していくことで、「でも私はこう思う」という「正解」が自分のなかに創り上げられていくのです。
 
カウンセリングの現場でも、よく「無正解読書法」をおすすめしています。
 
読書が苦手な方のために、たくさんの本を同時に読んでいくためのテクニックをご紹介することもよくあります。
 
この連載のなかで、さまざまなタイプの本をご紹介しているのも、じつは読書のきっかけづくりに少しでも貢献できたらなという思いがあるからです。
 
本は人と違って、もくもくとあなたに自分の「正解」を伝えてきてくれます。
 
あなたはそれを受け取り、じっくりゆっくり考えてみることができる。
 
その静かなやり取りこそが、「自分にとっての正解」を創り上げていってくれるのです。
 
Brain with Soul代表
生きづらさ専門カウンセラー
しのぶかつのり(信夫克紀)
 

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生きづらい人生の歩き方 <目次>

1.生きづらい人がAI時代に生き残れる仕事とは?
2.「世界一即戦力な男」に見る引きこもり脱出の糸口
3.生きづらい人向け「ビジネスの成功法則」
4.あなたは「善人」ですか「悪人」ですか?
5.お金は好きですか?-生きづらい人が陥るお金のジレンマ
6.「お金もうけ」にとらわれなくなる話
7.生きづらい人は「リア充」より「ジツ充」を目指そう
8.我慢してるのに自分勝手と言われる
9.生きづらさの正体
10.死んでも世界はつづくのか?
11.実存を充実させる生き方
12.他人の目が気になる人へ
13.「ジツ充」の極め方
14.不安の上手な対処法
15.変えられること、変えられないこと
16.「変えられること」の見つけ方
17.感情に飲み込まれない方法
18.自分と同じ症状の人が見当たらない
19.人生を変える方法
20.人生が変わる瞬間に必ず起こる問題
21.「心の空間」を生きる
22.話が噛み合わないと感じるなら
23.人生に疲れ果てたとき
24.「自分らしさ」とは何か?
25.AIと張り合うくらいなら
26.ジツ充とジコチュウの違い
27.社会に絶望している人へ
28.ネガティブ思考を変える適切な方法
29.生きづらい人は仕事を「三つ」もとう
30.心の健康法の効果が出ない理由
31.ベーシックインカムで将来も安心?
32.「悩み解決書」で悩みが解決しない理由
33.生きづらさを癒す一つの方法
34.もっとクヨクヨ考えよう
35.仕事を三つもつ理由
36.好きなことを仕事にする…?
37.苦しみの活かし方
38.向かい風を追い風にする生き方
39.行動力を身につける方法
40.お金との上手なつき合い方
41.自己洗脳と自己欺瞞
42.人並みという幻想
43.元気がないと幸せになれないのか?
44.「社会の常識」に振りまわされない
45.気が休まらない…
46.綺麗事に気づいてしまう人
47.生きづらい人が起業を成功させられる理由
48.そんなかんたんな話じゃない
49.人に気をつかい過ぎて疲れしまう
50.悩み過ぎて体がガチガチ
51.正解なんてない
52.心に余裕がない
53.誰に相談したらいいのかわからない
54.やる気はどこから湧いてくる?
55.人と対立してしまう
56.許すか、許さないか
57.生き方を決める
58.好きなこと探しの迷宮
59.生きづらさは誰のせい?
60.集中しすぎてしまう
61.家にも世の中にも居場所がないときの解決法
62.不用意に交友関係を増やそうとしない
63.自分を最強の味方にする方法
64.世間のしがらみから脱け出したい
65.あと一歩が踏み出せない
66.なぜメンタルが弱いのだろう…?
67.生きづらい人が「苦手」を克服する方法
68.心配ごとが頭から離れない
69.認められたいのに認めてもらえない
70.引きこもりは「悪いこと」なのか?
71.楽に生きたい
72.失言が多いので減らしたい
73.誰も心配してくれない
74.お金の上手な使い方
75.やる気が出ないのはなぜなのか?
76.深く悩んでいる人の方が「えらい」のか?
77.生きづらい人が幸せになりたいなら
78.この人と結婚していいのか?
79.心が敏感な人向けの対処法から抜け落ちている視点
80.人生を変えられる人と、変えられない人の違い
81.親が嫌いな自分はおかしいのか?
82.著名人と自分を比べてしまう
83.自分を信じられない
84.上司や部下に言うことを聞いてもらえない
85.劣等感は克服も解消もしなくていい
86.ポジティブシンキングがうまくできない
87.結果だけで判断される社会
88.「自分がされたら嫌ことは他人にしてはいけない」の嘘
89.「性格が悪い」と言われてしまう
90.「ありのままの自分」というやっかいな問題
91.「お金」以外に8つの基準をもとう
92.どうしてこんなにつらいのに誰にも伝わらないのだろう?
93.仕事が恐い、職場が恐い - その恐怖の正体と解決策
94.「恩知らずな人」を許せない
95.他人を不愉快にさせてしまう
96.「等身大の自分」という言葉にひそむ罠
97.有効な「貯金」の仕方を身に着けよう
98.「なぜ怒っているのかわからない」と言われてしまう
99.頑張っているのに結果が出ない・・・
100.自分を「弱い」と感じている人へ
101.集団になじめないなら「思いどおり」にやろう
102.無駄に苦しんできただけだった
103.お金の不安をなくす方法
104.私の「すべて」をわかってもらいたい - わかってもらいたい症候群
105.なぜ苦しみを「克服」できないのか?
106.生きづらいなら「心地よい人生」を目指そう
107.生きづらい人は「扁桃体をいたわる生き方」を身に着けよう!
108.生きづらい人が自由になれる「メタ思考」とは?
109.世間との「ほどよい距離」の取り方とは?
110.たんたんと生きる
111.生きづらい人が目標を達成できない本当の理由
112.三理一体の法則がうまくいかない人の共通点とは?
113.カタルシスが生きづらさ脱出の「起爆剤」になる理由
114.「生きづらさ克服」の気力を失いそうなあなたへ
115.「仕事に行きたくない、家にいたい」当事者の声と具体的な対処法
116. 気が弱い人が人生を変える極意
117.消えない恨みへの「レベル別」対処法
118.生きづらさをこじらせる「完全な被害者バイアス」とは?
119.生きづらいなら「役割」を果たし人生を落ち着かせよう
120.生きづらい人にもっとも大切な支援
121.生きづらい人は「意志が弱い」のか?
122.自分軸よりも大切なもの -「実存軸」で生きよう
123.人の言葉に傷つきやすい人が知ると楽になる二つの事実
124.メタ思考力を鍛えたいなら「バカ」や「アホ」ともつき合おう
125.生きづらさの「原因」を安易に特定するネット記事が多すぎる
126.「誰でもHSP症候群」にかかった日本
127.「結論だけ欲しがる社会」に踊れされるな
128.生きづらい人は「ギバー」を目指さなくていい
129.「一人で生きていく」と決めた生きづらい人に必要な覚悟
130.マイノリティは、なぜ生きづらいのか?
131.生きづらい人の「意識」の上手な活かし方
132.もんもん耐性、それは自分の「本質」と向き合える力
133.生きづらい人はAIと仲良くなれる - 関係性のシンギュラリティ
134.「メンタルが強い人」のアドバイスを真に受けない
135.雑談力は必要か?雑談できないあなたへ
136.嫉妬しやすい人が「嫉妬しない人」になりたいなら
137.お金に振り回されなくなる「二つの力」
138.日本社会で生きづらい人が苦しんでいる本当の理由
139.自分は本当に「生きづらい」のだろうか?
140.生きづらい人はコミュニケーションが得意という事実
141.内にこもりたいとき、あなたはどうしていますか?
142.「憧れの人」を目指すな - ビジネスの成功者に憧れる生きづらい人へ
143.私には不満がない
144.「無駄にプライドが高い人」が好きだ
145.その他大勢になるな、唯一無二のままであれ。
146.「生きる意味」が見つからない、生きづらい人へ
147.「異物」として生きて
 


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読むと心が強くなるコラム

「読むだけで生きる勇気が湧いてくる」と大好評をいただいている、しのぶかつのり(信夫克紀)の連載コラムです。
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