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更新日:2022年6月29日

心の健康法の効果が出ない理由

 

心の健康法の効果が出ない理由 生きづらい人生の歩き方 第30回

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生きづらい人生の歩き方

 

第30回
心の健康法の効果が出ない理由

 

┃なぜ心の健康法の効果が出ないのか?

 
テレビや雑誌などでも、あらゆる「心の健康法」が紹介されていますよね。
 
そのほとんどは、科学的な証拠があるもの
 
いわゆるエビデンスですね。
 
エビデンスがあると、私たちは安心してその「心の健康法」を使うことができます。
 
世間でエビデンスは、唯一の正解の位置を不動にしていると言えるでしょう。
 
でもじっさいには、その「心の健康法」を試してみても、効果がまったく出ない場合があります。
 
それは、いったいなぜなのでしょうか?
 
答えはとてもかんたんで、エビデンスは「唯一の正解」ではないからです。
 
私たちが日々目にしている、エビデンスのある「心の健康法」は、あくまでも仮説でしかありません。
 
じっさいに多くの場合、反対の結論を示すエビデンスが存在します。
 
たとえば、同じ脳内物質でも、幸せになると言われる一方、不安の原因だとも言われる。
 
じつは、これが当たり前の状況なのです。
 
科学哲学者のポパーは、テストされることによって反証できる可能性がない理論は科学ではないと言っています。
 
参考文献
カール・ライムント・ポパー「科学的発見の論理」恒星社厚生閣
 
つまり、「唯一の正解」ではないからこそ科学と呼べるのであって、「唯一の正解」であると言い張った時点で、科学ではなくなってしまう。
 
「唯一の正解」を認めずに、仮説を修正しつづけていく営み。
 
それが科学だということでしょう。
 
したがって科学的なエビデンスのある「心の健康法」も、すべての人に効果がなくて当然なのです。
 
 

┃どうすれば「唯一の正解」を得らえるのか?

 
では、どうすれば心の健康法の「唯一の正解」を得られるのでしょうか?
 
そもそも、その「心」というもの自体についても、自然科学の研究者同士で、だい~ぶ意見が異なっています。
 
たとえば解剖学者の三木成夫は、「心」には外からの刺激に興奮する「内臓のはたらき」が密接に関係していると述べています。
 
それに対して神経科学者セバスチャン・スンは、「脳の配線」の活動だけをすべて観察することさえできれば、「心」を解読できると述べています。
 
参考文献
三木成夫「ヒトのからだ-生物史的考察」うぶすな書院
セバスチャン・スン他「コネクトーム」草思社
 
お互いに、「心」についてまったく別の正解を持ち、研究をしているのです。
 
じつはここに、生きづらさを抱えた人が、この世界を生き抜いていくための非常に重要なヒントが隠されています。
 
それは、二人が「あえて」そういう立場に立っているという点です。
 
二人とも、他にも正解があるのは重々承知している。
 
でも、自分はこの正解を「選ぶ」。
 
数ある正解の中から、みずから信じる正解を「選んでいる」ということです。
 
私たちは幼いころから、すべてのものごとに「唯一の正解」があるかのように教え込まれてきました。
 
とくに、目の前にある現象については、自然科学で証明されていることが「唯一の正解」であるかのように教わってきた方がほとんどではないでしょうか。
 
だから私たちは、ごく当然のようにエビデンスのある「心の健康法」を受け入れることができます。
 
しかし、エビデンスは「唯一の正解」ではありません。
 
だから、数ある正解候補の中から自分で正解を選ぶ
 
あなたが正解を決める。
 
必要であれば、みずから正解を創り上げていく
 
生きづらい人生を歩いていく上では、その態度が非常に大切になるのです。
 
 

┃「自分の物語」を大切にあつかおう

 
自分で正解を創り上げていく。
 
このようなお話をすると、「自分で正解を創るなんておこがましい」と感じる方も多いようです。
 
たしかに、研究者や臨床家が心血注いで提案したエビデンスに対抗するようで気が引けますよね。
 
専門家のなかにも、このような行為は気もちよく思わないかたもおられるかもしれません。
 
だから、エビデンスを全否定する必要はありません。
 
エビデンスは最大限尊重する対象であり、貴重なデータであることは間違いないのですから。
 
でも、あなただって、自分自身で解決した問題がたくさんありますよね?
 
心の不調だって、病院やカウンセリングに行っても変わらなかったけど、自分自身で工夫したら乗り越えられたこと、あったのではないでしょうか?
 
残念ですが、それらの貴重な貴重な情報を、医師やカウンセラーは知りません。
 
なぜなら、そういう意見を受け入れる姿勢が、専門家側に圧倒的に欠けているからです。
 
そのため、そういう貴重な意見を積極的に受け入れる仕組み自体もそもそもないのです。
 
だから、医師やカウンセラーが知らない「正解」が山ほどあるのです。
 
それは、現代の臨床体制とエビデンス主義の落とし穴とも言えるでしょう。
 
人気の哲学者、國分功一朗さんと千葉雅也さんは、そんな「個人の物語」を軽視する風潮に警鐘をならしています。
 

エビデンス主義には別の側面があって、非常に少ないパラメーターだけを使って心理を認定するので、個人の物語を無視するわけです。

(中略)

本人にとって大事な物語なのに、エビデンス主義は「それは誰にでも通用するわけじゃない」「科学的な根拠はない」と民主主義的な暴力で叩き潰してしまうところがあるわけです。

引用元
國分功一朗 千葉雅也「言語が消滅する前に」幻冬舎

 
あなたも自分の経験を軽視しないでください。
 
「自分の物語」を大切にあつかってください。
 
あなたが、心の不調をなんとか切り抜けてきた「しのぎ方」は、あなたにとっての貴重な財産なのです。
 
たとえ多くの人と共有できるようなエビデンスがなくとも、それは少なくともあなたにとっては「正解」なのですから。
 
どうかそのことを忘れずに「心の健康法」と向き合ってくださいね。
 
Brain with Soul代表
生きづらさ専門カウンセラー
しのぶ かつのり
 

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生きづらい人生の歩き方 <目次>

1.生きづらい人がAI時代に生き残れる仕事とは?
2.「世界一即戦力な男」に見る引きこもり脱出の糸口
3.生きづらい人向け「ビジネスの成功法則」
4.あなたは「善人」ですか「悪人」ですか?
5.お金は好きですか?-生きづらい人が陥るお金のジレンマ
6.「お金もうけ」にとらわれなくなる話
7.生きづらい人は「リア充」より「ジツ充」を目指そう
8.我慢してるのに自分勝手と言われる
9.生きづらさの正体
10.死んでも世界はつづくのか?
11.実存を充実させる生き方
12.他人の目が気になる人へ
13.「ジツ充」の極め方
14.不安の上手な対処法
15.変えられること、変えられないこと
16.「変えられること」の見つけ方
17.感情に飲み込まれない方法
18.自分と同じ症状の人が見当たらない
19.人生を変える方法
20.人生が変わる瞬間に必ず起こる問題
21.「心の空間」を生きる
22.話が噛み合わないと感じるなら
23.人生に疲れ果てたとき
24.「自分らしさ」とは何か?
25.AIと張り合うくらいなら
26.ジツ充とジコチュウの違い
27.社会に絶望している人へ
28.ネガティブ思考を変える適切な方法
29.生きづらい人は仕事を「三つ」もとう
30.心の健康法の効果が出ない理由
31.ベーシックインカムで将来も安心?
32.「悩み解決書」で悩みが解決しない理由
33.生きづらさを癒す一つの方法
34.もっとクヨクヨ考えよう
35.仕事を三つもつ理由
36.好きなことを仕事にする…?
37.苦しみの活かし方
38.向かい風を追い風にする生き方
39.行動力を身につける方法
40.お金との上手なつき合い方
41.自己洗脳と自己欺瞞
42.人並みという幻想
43.元気がないと幸せになれないのか?
44.「社会の常識」に振りまわされない
45.気が休まらない…
46.綺麗事に気づいてしまう人
47.生きづらい人が起業を成功させられる理由
48.そんなかんたんな話じゃない
49.人に気をつかい過ぎて疲れしまう
50.悩み過ぎて体がガチガチ
51.正解なんてない
52.心に余裕がない
53.誰に相談したらいいのかわからない
54.やる気はどこから湧いてくる?
55.人と対立してしまう
56.許すか、許さないか
57.生き方を決める
58.好きなこと探しの迷宮
59.生きづらさは誰のせい?
60.集中しすぎてしまう
61.居場所がない
62.不用意に交友関係を増やそうとしない
63.自分を最強の味方にする方法
64.世間のしがらみから脱け出したい
65.あと一歩が踏み出せない
66.なぜメンタルが弱いのだろう…?
67.生きづらい人が「苦手」を克服する方法
68.心配ごとが頭から離れない
69.認められたいのに認めてもらえない
70.引きこもりは「悪いこと」なのか?
71.楽に生きたい
72.失言が多いので減らしたい
73.誰も心配してくれない
74.お金の上手な使い方
75.やる気が出ないのはなぜなのか?
76.深く悩んでいる人の方が「えらい」のか?
77.生きづらい人が幸せになりたいなら
78.この人と結婚していいのか?
79.心が敏感な人向けの対処法から抜け落ちている視点
80.人生を変えられる人と、変えられない人の違い
81.親が嫌いな自分はおかしいのか?
82.著名人と自分を比べてしまう
83.自分を信じられない
84.上司や部下に言うことを聞いてもらえない
85.劣等感は克服も解消もしなくていい
86.ポジティブシンキングがうまくできない
87.結果だけで判断される社会
88.「自分がされたら嫌ことは他人にしてはいけない」の嘘
89.「性格が悪い」と言われてしまう
90.「ありのままの自分」というやっかいな問題
91.「お金」以外に8つの基準をもとう
92.どうしてこんなにつらいのに誰にも伝わらないのだろう?
93.仕事が恐い、職場が恐い - その恐怖の正体と解決策
94.「恩知らずな人」を許せない
95.他人を不愉快にさせてしまう
96.「等身大の自分」という言葉にひそむ罠
97.有効な「貯金」の仕方を身に着けよう
98.「なぜ怒っているのかわからない」と言われてしまう
99.頑張っているのに結果が出ない・・・
100.自分を「弱い」と感じている人へ
101.集団になじめないなら「思いどおり」にやろう
102.無駄に苦しんできただけだった
103.お金の不安をなくす方法
104.私の「すべて」をわかってもらいたい - わかってもらいたい症候群
105.なぜ苦しみを「克服」できないのか?
106.生きづらいなら「心地よい人生」を目指そう
107.生きづらい人は「扁桃体をいたわる生き方」を身に着けよう!
108.生きづらい人が自由になれる「メタ思考」とは?
109.世間との「ほどよい距離」の取り方とは?
110.たんたんと生きる
111.生きづらい人が目標を達成できない本当の理由
112.三理一体の法則がうまくいかない人の共通点とは?
113.カタルシスが生きづらさ脱出の「起爆剤」になる理由
114.「生きづらさ克服」の気力を失いそうなあなたへ
115.「仕事に行きたくない、家にいたい」当事者の声と具体的な対処法
116. 気が弱い人が人生を変える極意
117.消えない恨みへの「レベル別」対処法
118.生きづらさをこじらせる「完全な被害者バイアス」とは?
119.生きづらいなら「役割」を果たし人生を落ち着かせよう
120.生きづらい人にもっとも大切な支援
121.生きづらい人は「意志が弱い」のか?
122.自分軸よりも大切なもの -「実存軸」で生きよう
123.人の言葉に傷つきやすい人が知ると楽になる二つの事実
 


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